春の幕内の壱。花見と左文字兄弟と。後 ページ26
時折ひらり、ひらり、と薄紅色の花びらを降らせる桜はとても幻想的でAが今まで見たこともないくらいに立派なものでした。
「……ほんとに、綺麗。」
「ここは本丸の誰も知らない、僕達だけの秘密の花見の席なんだよ。」
「Aちゃんを驚かそうって、兄さん達とこっそり花見の計画を立ててたんだ。」
内緒にしててごめん、と謝る小夜にAはぶんぶんと首を振って再び桜を見上げました。
「こんなに綺麗な桜があるのね、あたし、なんだか身体の芯がきゅーってなるわ……」
「それを人は、感動、というのですよ。」
切ないような、胸が一杯になるような、Aは初めて体験する不思議な感覚でした。
宗三は持ってきた荷物の中からござを地面に敷き、大事に風呂敷に包まれたお重を中心におきました。
「折角の花見なんだから、今日は光忠に頼んで花見用の特別な重を用意してもらったよ。」
「花見の団子も僕と兄さんたちとで作ったんだ。」
「さあ、A。花見を始めましょう。」
お重には桜を模った蒲鉾や桜型の人参の入った煮物、桜でんぷんで彩られたちらし寿司などなど目にも鮮やかなご馳走が沢山詰められていました。
食べ物に目が無いAは勿論大喜びです。
花に弁当に大忙しのAに江雪と宗三は満足そうに目を合わせて微笑みました。
「今度はあたしも一緒にお団子作りしたいな。」
「今回はAちゃんに内緒だったからね。」
「次は四人で作りましょう。」
「五月は端午の節句で菖蒲を見に行こうか。」
「じゃあお団子じゃなくて柏餅かしら？」
「僕は笹餅がいいな……」
「両方とも作れば良いじゃないか。」
「五月に入るまでに、笹と柏の木を皆で見つけますよ？」
「はーい！」
来年ももう一度来たい、そうAが言わないのは恐らくA自身が戦場に立ち続けていくつもりだからでしょう。
戦場に行くとはこれ即ち死地に赴くということ、明日も生きているという保証はどこにも無いのです。
戦に出る度にA達が無事に帰ってくるよう江雪達左文字兄弟が祈っていることをAは知りません。
歴史修正主義の粛清が終われば、自分達はどうなるのか？
Aと一緒に居続けることが出来るだろうか？
先の事は分かりません。
笑いあうAと小夜、それを穏やかな眼差しで見つめる宗三と自分。
それでも今だけは、その時が来るまでは、この穏やかで幸せな時間を感じていたい。そう江雪は思わずにいられませんでした。
弐拾壱。あたし、もう食いしん坊でもなんでもいいですっ！！→←春の幕内の壱。花見と左文字兄弟と。中
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菱神 昂(プロフ) - 特にリクエストはいただかなかったので、祭り会場は小ネタ置き場に改造いたします。 (2015年5月1日 20時) (
レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
菱神 昂(プロフ) - 御礼祭リクエスト受付は本日21時からです。リクエストは必ずお知らせを熟読された上でお願いします。ある意味キーワードの代わりとなりますのでよろしくお願いいたします。著者。 (2015年4月30日 14時) (レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
菱神 昂(プロフ) - (3k猫*´∀`*){よきかな〜♪さん» コメントありがとうございます！この章から漸く本線が始まるなという感じです。今から更に盛り上がる筈ですのでこれからも椿切と本作をよろしくお願い致します！ (2015年4月9日 23時) (レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
(3k猫*´∀`*){よきかな〜♪ - お〜！だんだん話が盛り上がってきましたね！更新頑張ってください！ (2015年4月9日 19時) (レス) id: fdc932d927 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菱神 昂 | 作成日時：2015年3月6日 23時
