拾陸。あたし、夢見は良くないです……(残酷描写有) ページ18
注)今回残酷な描写が有ります。
鉛色の雲が空を覆い、太陽も月も隠してしまっている。
酒に酔った主様の機嫌は、すこぶる良い。
馬の上から煌々と灯りが点いた家々を見下ろす。
小さな村だった。
きっと主様が贈った酒で宴を開いているのだろう。
賑やかな歌が、
村人達の笑い声が、
こんなに離れたあたしにも聴こえる。
でも今からそれが悲鳴と呻きに取って代わる。
男も女も、稚児も老人も、
今からあたしが斬り殺すのだ。
ーーああ、畜生。またあの夢か……
これが只の戦であれば、どれ程にあたしは救われただろうか？
敵の肉を斬り、敵の骨を断ち、命散らせる。
それはあたしの仕事。
今からやるのは『試し斬り』(お戯れ)だ。
「この椿切、ある男が娘の薬欲しさに売った刃こぼれせぬ珍作と聞く。しかし、音に聞くのみでは真偽は解らぬ故、椿狩りへ出掛けよう。」
貴族が腰に太刀を佩いている事なぞ、
誰も不思議に思わない。
村長の家の戸を主様が叩く。
暫くして白髪混じりの男が戸を開けた。
男は主様の直参に恐縮し、土間に膝をつく。
「これはこれは、藤原様。雅なる御方がこのようなあばら家においで下さいまして、如何様にございましょうか？」
「酒は楽しんでおるか？」
平伏する村長にニタニタと上機嫌な主様は嗤う。
「ははっ、藤原様より賜りました酒にて、只今村の者共と宴の席を設けております故。」
「そうか、では私も家人もその宴とやらに加わろうと思うのだが、よいな？」
「恐れ多いことに御座います。今席を設けさせますので暫しお待ちを……」
慌てて村長は周りの者達に席を設けるよう唾を飛ばして言う。
落ち着き無さげに主様の手があたしを撫ぜる。
宴会の間に用意された席に座ること無く、
主様が言う。
「皆の者、今日は私が椿狩りを披露せん。」と
ゴロンと、
一番側に座っていた村長の首が転がり、辺りに朱を撒き散らして体が崩れ落ちる。
突然のことに、村人たちは唖然とする。
一歩、
主様が歩をすすめる。
忽ち悲鳴が宴の席を支配した。
「藤原様、何故、何故にこの様なご無体を！！」
ゴロン、
足下に跪いて無体の理由を問う若い衆を主様は何の躊躇いもなく斬り捨てる。
「なに、椿狩りに興じておるだけよ。」
逃げようとする者を家人達が嘲笑って打ちのめす。
ごろりごろりと首が転がっていく。
「音に聞いた通り良く斬れる。見よ、まだ刃こぼれせぬぞ。」
十を超えたところで主様が感心したようにあたしを見た。
拾漆。あたし、もう妹でいいやって思うんです……。→←拾伍。あたし、我慢強い方だと思うんです。
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菱神 昂(プロフ) - 特にリクエストはいただかなかったので、祭り会場は小ネタ置き場に改造いたします。 (2015年5月1日 20時) (
レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
菱神 昂(プロフ) - 御礼祭リクエスト受付は本日21時からです。リクエストは必ずお知らせを熟読された上でお願いします。ある意味キーワードの代わりとなりますのでよろしくお願いいたします。著者。 (2015年4月30日 14時) (レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
菱神 昂(プロフ) - (3k猫*´∀`*){よきかな〜♪さん» コメントありがとうございます！この章から漸く本線が始まるなという感じです。今から更に盛り上がる筈ですのでこれからも椿切と本作をよろしくお願い致します！ (2015年4月9日 23時) (レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
(3k猫*´∀`*){よきかな〜♪ - お〜！だんだん話が盛り上がってきましたね！更新頑張ってください！ (2015年4月9日 19時) (レス) id: fdc932d927 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菱神 昂 | 作成日時：2015年3月6日 23時
