拾伍。あたし、我慢強い方だと思うんです。 ページ17
再び目を覚ましたAは今は誰も部屋にいない事を確認して、痛みの残る左肩を抱きました。
気を失っている間に誰かが包帯を巻いてくれていたようで、少し血が滲んでいるものの出血は大分治っているようです。
事前に飲んだ痛み止めのお陰であの時は痛みを我慢できました。
しかし、今はその痛み止めも切れています。
恐らく薬研に言えば新しい痛み止めを貰えるのかもしれませんが万一傷口を見せろと言われれば恐らく加州への印象は更に悪くなってしまうでしょう。
それに……きっと加州くんも傷付く……
熱まで持ち始めた傷に気付かないフリをしてAは再び眠ろうと目を閉じましたが、先程目が覚めたばかりで眠れずに少し外で涼もうと枕元に置いてあったいつもの少し大きな赤い羽織を肩に掛けフラフラと起き上がりました。
襖をそっと開けると外は既に丑の刻もとうに過ぎてしまっているのでしょう、紺青から群青へと空は塗り替えられつつありました。息を吸えばヒヤリとした静寂が肺に満たされるようで、Aは自分が一番好きなこの時間に起きれたことを僥倖だと思いました。
空を見ていたAが視線を戻すと、誰かが縁側に座り柱を枕に眠っているのが目に入りました。
加州です。Aが目を覚ましたら、嫌われていてもせめて謝ろうと待っていた加州はAが再度気を失ってからずっとこの場所で待っていたのでした。
Aは起こさないようにそっと近寄って頬に触れてみました、夜風はとっくに加州を冷やしきっていますが起きる様子はありません。
起こさぬように自分が肩に掛けていた羽織を加州に掛けました。自分には大き過ぎる羽織の大きさは加州には丁度よく、羽織の赤が黒をより一層引き立てて、なんだかAは自分には勿体無いもののように思えました。
「…あなたの方がよっぽど綺麗、椿で飾るならあたしなんかじゃなくてあなたみたいな人に飾ればいいのにね…」
自嘲気味にAは微笑んでからそっと手入部屋に戻りました。
Aが立ち去った後、加州はそっと目を開きました。起きてはいたものの、なんだか声を掛けることは躊躇ってしまい、結局狸寝入りを決め込んでしまいました。
自分はまだAに嫌われてはいない。
むしろAは、俺を自分より綺麗だと言ってくれた。でも……
どうしてあんなに哀しそうだったのか。
鮮やかな赤の羽織。美しい黒い椿の紋が、加州にはまるでAを苦しめる呪いのように見えたのでした。
拾陸。あたし、夢見は良くないです……(残酷描写有)→←拾肆の後。縁側にて。
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菱神 昂(プロフ) - 特にリクエストはいただかなかったので、祭り会場は小ネタ置き場に改造いたします。 (2015年5月1日 20時) (
レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
菱神 昂(プロフ) - 御礼祭リクエスト受付は本日21時からです。リクエストは必ずお知らせを熟読された上でお願いします。ある意味キーワードの代わりとなりますのでよろしくお願いいたします。著者。 (2015年4月30日 14時) (レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
菱神 昂(プロフ) - (3k猫*´∀`*){よきかな〜♪さん» コメントありがとうございます！この章から漸く本線が始まるなという感じです。今から更に盛り上がる筈ですのでこれからも椿切と本作をよろしくお願い致します！ (2015年4月9日 23時) (レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
(3k猫*´∀`*){よきかな〜♪ - お〜！だんだん話が盛り上がってきましたね！更新頑張ってください！ (2015年4月9日 19時) (レス) id: fdc932d927 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菱神 昂 | 作成日時：2015年3月6日 23時
