episode*3. ページ4
母は、大手企業の令嬢だったが、父が何の仕事をしているのか、Aは知らなかった。
仕事をしていたかも分からない。
外出する日もあれば、一日中家に居たり。ちょっと出たと思えば、しばらく帰って来なかったり。と、法則性が全く無かった。
出掛けても、Aは何処に行くのか知らなかった。
母が知っていたのかもAは知らない。
ともかく、何等かの用事があったのは事実だ。
ある日、父が外出先から帰ってきた。
いつものように、呼鈴が鳴り、Aは玄関の扉を開けた。
いつものように、Aは「おかえり」と、笑顔で迎えた。父も、笑顔で「ただいま」と答えるはずだった。
しかし、そうではなかった。
幼いAが見たのは、立つのがやっとの状態の酷く衰退した父だった。
体中から血を流し、只でさえ白い体は、病気のように蒼白くなっていた。
身に着けていたシャツは、ボロボロに切り裂かれ、そこからも血が滲み出ていた。
目は虚ろで、生気が失われていた。
Aは、目の前の父親を、黙ったまま見ているしかなかった。
父は、扉が完全に開かれると同時に、音も無く倒れ込んだ。
出血が酷く、病院に緊急搬送され、なんとか一命を取り留めた。
この日からだ、雪城家の日常が崩壊していったのは。
その日の事は、雪城家の禁句となった。
勿論、誰が禁止にした訳ではない。自然と言ってはいけない雰囲気だったのだ。
Aは、幼いながらも、鋭くその雰囲気を察知した。
だから、何も言わずに普通に過ごした。母も、使用人も、何も言わなかった。
父も、何も言わなかった。
その後もいつも通りの日常をA達は過ごした。
朝起きて、顔を洗って、食事をして、歯を磨く。
しかし、そのちょっとした動作の中に、張り詰めたようなピリッとした空気を感じるようになっていた。
楽しかった食事も、味が薄くなった気がした。
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神聖(プロフ) - 銀さん» ありがとうございます！面白く出来たらイイな…。更新､頑張ります！！ (2015年4月17日 20時) (
レス) id: 05251ef90d (このIDを非表示/違反報告)
銀(プロフ) - 更新頑張って下さいー！！プロローグだけでも面白そうな予感が・・・ (2015年4月17日 20時) (レス) id: 420098c989 (このIDを非表示/違反報告)
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