96話 ページ20
次の日、私は木戸川清修へと来ていた。
所謂偵察だ。
雷門と勝敗指示のない、皆本気の試合をしたが木戸川には勝てなかった。
そんな木戸川の選手がどんな練習をしているのか、どんな力を持っているのか知りたくなり有人くんには用事だと伝え内緒で来た。
雷門の制服にいつもの水色のカーディガンではなく黄色のカーディガンを羽織り、膝上のスカートをいつもよりも少しだけ短くし、髪を緩く結い、変装とは言い難い変装でやってきた。
試合とかでテレビとかに出ているらしいし、偵察だとバレたら色々と面倒くさそうだ。
｢あ、あのサッカー部ってどこで練習してますか？｣
横を通り過ぎようとした木戸川の制服を着た男子生徒に声をかけると、愛想よく教えてくれ、グラウンドにたどり着いた。
木陰から隠れて見ようとするが生憎ここからでは見えにくく、もう少し近くに寄ってみようと移動する。
｢...喧嘩、かしら｣
練習中にも関わらず、何か言い合いをしているサッカー部のメンバーたち。
んー、と唸りながら顎に手を当てて考えていると、ふと影が落ちた。
それに気づき、振り返ると紫色の髪をした、寝癖だろうか、外側に跳ねている髪型の男の子だった。
｢え、えと、｣
目が合い、しどろもどろになりながら言い訳を探していると、私の目線に合うように腰を曲げ顔を覗き込んできた。
｢あ、あの...？｣
じっと何かを考えるように私を見つめてくる彼に少しだけ恥ずかしくなり頬が熱くなるのを感じながら目を逸らして声をかけると小さく声を出した。
貴志部｢あぁ、ごめんね。俺は貴志部大河。キミは雷門中の...確か中篠Aさん、であってたかな？｣
微笑みながら自己紹介し、私の名前までも知っている彼に驚きながら頷くとさらに笑みを深くした。
貴志部｢こんなところで何してるんだ？｣
｢いや、別になにも｣
偵察、だなんて答えられるはずもなく無愛想に言うと、そっか、と言い私の腕を掴んで引き摺るようにグラウンドに向かっていく。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひさめ | 作成日時：2018年7月5日 16時
