運命【風丸一郎太】 (ページ14)

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運命１３ページ14

最後の化け物を倒し終わったからなのか、体の力が抜けその場に倒れ込む。

目の前がぼやけてきて、まずは目から視えなくなるのか、と自嘲気味に笑う。

すると、ふいに私の体を温もりが包んだ。

そして、心地いい声が耳に入ってくる。

｢俺、お前のことずっと待ってる。お前が誕生日に祈りに行っていた桜の木の下で待ってる。
だから、さよならなんて言わないからな｣

ぽつぽつと頬に温かい滴が落ちてくるのに少し胸が痛んで顔のありそうな位置に手を伸ばす。

風丸くんは私がもう見えなくなっているのに気づいたのか、私の手を取ってくれた。

｢泣かないで。私、一郎太くんの笑顔が好きなの、だから笑って｣

掠れている自分の声になんだか哀しく思える。

｢....て.....る｣

愛しい人の声さえも聞こえなくなってきた。
声もでないし、掴まれている手がどんどん灰になっているのにも気づいた。

風丸くんは、一郎太くんは優しい人だからきっと哀しい顔をしている。
そう思い、頑張って笑顔を浮かべたつもりだけど、笑えていたのかも分からない。

___あぁ、消えたくないなぁ。

目が熱くなり、鼻がツンとし、やがて涙が伝う。

涙はまだ出るしまだ温かいんだ、なんて思って。

また涙が溢れて伝うと、それを拭うように頬に手が添えられた。

この手は一郎太くんの手だ。
大きくて温かくて優しいこの手は大好きな人の手だ。

愛してる、なんとか口を動かし、そのまま意識を手放した。

___愛してる

最期にそう聞こえた気がした。