運命１０ ページ11
化け物を倒した後、目の前にふわりと銀色が舞った。
｢こないだぶりね、A、風丸くん｣
微笑む母に、風丸くんと私は戸惑う。
｢A、あと1体よ。それを倒したら私たちの使命は終わるの。
そして、貴女の運命もこれでようやく終わるわ｣
"あと1体"その言葉が頭の中を支配する。
そうか、あと1体なのか。
｢Aは全て思い出したようね。私たちの使命と私たちはなんなのか｣
風丸くんは何のことか分からないという顔をしており、母はくすりと笑い続けた。
｢私たちはね、あの化け物なの。
あの化け物は本来血肉を求めるものじゃなくて人間に幸福を与える生き物なんだけど、少しと言っても私が生まれる前からなんだけど、その時から増えすぎたことが原因であぁなってしまったの。
それだけでなく人間も自分の手で幸福を掴めるようになったから私たちはもう必要ないから化け物を一掃して封印して私たちも消えるわけ｣
｢...え？｣
母の説明に頭が追いついていない風丸くんの肩に手を置き、呟くように言う。
｢私は化け物を滅ぼすために生まれたの。それで化け物を倒しきったら私は必要なくなるから、私も化け物たちのように灰になって消える｣
風丸くんは眉を寄せ、きつく口を結んで私の手を取り、引き寄せ抱きしめた。
｢いなく、ならないでくれ。お願いだから、俺の前から消えないでくれ...!!｣
声が震えながらもはっきりと言う風丸くんに胸が痛くなり、母に目を向けると哀しげに微笑んで消えた。
｢ねぇ、私、帰りたくない｣
もう少しでお別れということをお互い分かっているため、更に胸の痛みが増しながらももう少しでさよならになるのならせめて最後の時まではそばに居たいと思い口にすると、風丸くんは小さな声で俺も帰したくないといった。
その日は風丸くんの家にお邪魔させてもらい、思い出話をし、抱き締めるように引っ付いて眠った。
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作者名：ひさめ | 作成日時：2018年7月6日 17時
