君に嘘【風丸一郎太】 (ページ3)

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嘘3 ページ3

風丸くんと言葉を交わしていく内に、段々と彼のことがわかった

冷たいけれど優しくて儚さがあってとても強い

そんな彼のことを視線で追い続けて私にも変化が起きた

風丸くんの視界に入れて話せると嬉しくて、冷たい目で見られると少しだけ胸が痛くて、優しいところを見つけると胸があったかくなる

｢これが、恋｣

そう、恋なのだ
初めて恋をしたのだ

知りたい、が知って欲しいに変わり、私を見てほしいと言う欲も増えた

のに。

聞いてしまったのだ、練習が終わって携帯を見つめ愛しそうに私の知らない人の名前を呼んでいるのを

(失恋なんて、..)

くす、と自分に対して笑い、グラウンドまで足を運んでいたのを回れ右してピアノにむかった

ズキズキと胸が痛むのを知らんぷりしながら、強く鍵盤を押して自分の気持ちをぶつけるように弾く

ピアノは私の気持ちを表してくれるかのように力強くて哀しい音を奏で、やがて音が消える

はぁはぁと荒い息を整えるように息をし、視線を感じて扉の方へ視線を向けると、さっきまでグラウンドにいたはずの彼がいた

｢ピアノ、うまいな｣

｢...どうもありがとう｣

相変わらず冷たい目をしているな、と思いながら風丸くんを一瞥して帰る準備をする

｢帰るのか？｣

｢えぇ、気分が乗らないから帰るわ｣

ふーん、と言って何故か私を見つめたまま動かずにいる風丸くん

｢風丸くん、部活に行かないの？｣

質問をしても答えてくれないのは今に限ったことではないし、と帰る準備をし終わり鞄を肩にかけて鍵を手にして扉へ向かう

扉を閉める私に視線を向けたままの風丸くんを不思議に思い目を合わせると風丸くんは軽く目を細めた

｢行くぞ｣

鍵を閉め終わった私の手を取り、風丸くんは歩き出した

風丸くんの横顔を斜め後ろから見つめ、また胸が痛んだ

(他に好きな人がいるのにどうして私の手を引いて歩くんだろう)