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自分が知っていた降谷零は、思っていた以上に普通の人間だと安心していた。
安室として初めて出会った、張りぼてのような爽やかな笑みはAにとっては動揺させる材料でしかなかった。
「私を守ってくれるのは嬉しいけど…
市民を守るのも、警察官の仕事ですよ」
荻原や松田よりも危険を伴う仕事。
優秀な彼はAの想像を超える以上に、責任を強いられているのだろうか。
どこの役職なのかどこの部署なのか。
それを明かさずぼやかすところや部下がわざわざAに出向いてくるという地点で、日本という国に関わる重要なメンバーの一員なのだろう。
そんな簡単な推理でしか想像はできないものの、優秀過ぎるからこそ彼も弱みを出せないでいる。
それを支えたいと思うのが、惚れた身としてできることだと思った。
「もし、何か事件があった際には私よりも近くの市民を優先する。
それを守ってくれるなら、私は付き合います」
「男としては、好きな女性を一番に守りたいというのが本音なんだけ」
「返事は?」
「…分かった」
ごね始めた彼を言い任せ、無理矢理菓子を口に突っ込んだ。
甘いと文句を言っていた彼の表情は歪む。
この状況に浮かれ、
「なんだか、今恋人っぽくて楽しいです」
そう言えば、身体がベッドに埋まる。
さらに嫌そうな顔をした降谷が自分を見下ろしていて、
「恋人っぽくて、は心外だな。
たった今僕達は付き合うって話だったじゃないか」
同じ菓子を口に突っ込まれる。
高くなった体温でチョコレートが早く溶けていく。
より甘くなった液体が舌に絡みついていく。
自分を見る視線でよりその溶けるスピードが上がっていくような気さえしてくる。
(…そっか、付き合って)
顔の横にある降谷の腕を掴み、
「…いいよ」
「えっ?」
「しても。
…私は、したい。
零」
目を見つめ返す。
顔は燃え上がるくらいに熱くなっている。
そんなのお構いなしで彼に挑めば、
「せっかく耐えていたのに、簡単に君は壊してくるね」
大きく溜息をつかれて、かかっていたタオルをAの顔にかける。
文句を言おうと立ち上がろうとした時、またベッドに引き戻されて、
「こういうことは、
酔って判断が緩くなった君よりも、素面の君としたい」
額に唇を落とされた。
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Nattu(プロフ) - 白雨さん» 白雨さん初めまして!キッドも二面性があるという点で何度かこの作品のキーマンになりつつ、青子ちゃんいるしなあ〜の気持ちでした!笑でも、書いてみたい欲はこの作品に出てくるくらいなのでチャレンジしたいと思います!大好き、ありがとうございます* (11月6日 16時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
白雨 - シリーズの最初の頃から毎日読ませて頂いてます。大好きです!((次回作について、怪盗キッド落ちを希望します! もちろんキッド様には青子ちゃんがいますが、この作品で何度か出ているキッド様が好きで…ご検討して下さったら嬉しいです!これからも応援しています! (11月5日 10時) (レス) @page19 id: f5a7983f74 (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - かるぴんさん» かるぴんサンありがとうございます!私の作風(?)に合わせてヒロくんをリクエストをいただきありがとうございます;;作風まで言われることは滅多にないのでとても嬉しいです‼︎穏やかお兄さんヒロくんも迷いますね…検討させていただきます!ありがとうございます (10月20日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - 紫苑さん» 紫苑サン、いつもありがとうございます!またリクありがとうございますー!赤井さん愛され〜クールだからこそ見てみたい感はありますね…ンン迷う…参考にさせていただきます‼︎ありがとうございます! (10月20日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 新たな展開にワクワクです。この小説が毎日の楽しみです!次回作を検討されているとのことですが、私は諸伏景光を希望します!Nattuさんの柔らかて温かい文章ととてもマッチすると思います!これからも応援してます!お体に気をつけて(*´-`) (10月20日 3時) (レス) @page1 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年10月18日 16時