119 ページ3
.
『カフェを営業しようと思うんだけど、お前もどう?』
兄からの誘いにAは迷うことなく乗っていた。
いつの間にか、兄家族を中心に実家ではカフェの話で持ち切りだった。
とはいっても一からというわけではなかった。
すでに実家は小さな喫茶店を経営していて、その系列店として兄家族がオープンするのだという。
『今もカフェで働いてんだろ?良かったらうちで働かねえか?
母さん達もAが居てくれた方が助かるって言ってるし』
小さな頃から実家の手伝いをしている手前、知っている身内と好きな空間で働けるのは気が楽だった。
(珈琲の匂い。
少し暗い室内。
有線やジャズが流れるのんびりとした空間。
だけど…
総代はそこにいない)
カフェ。
喫茶店。
その空間だけで満足できていたはずなのに、今では欲張りになってしまっていた。
カフェの開業準備や実家の手伝い。
慌ただしく移り変わる環境にAの手も必要になっていた。
兄のカフェや実家で働くのがもう少し先だったとしても、ポアロにはそう長くはいられないだろう。
このことをマスターに話すと、門出を祝福する、寂しそうにする、それよりも先に、
「…それは、安室君には話しているのかな?」
Aと安室の関係を示唆する言葉を投げられた。
マスターや梓、安室と恋仲にあることはまだ話していない。
話したとしても、梓に自分が安室のことが好きだということだけだ。
(そんなに駄々洩れだったんだな、私達)
自分はおろか、降谷という姿を隠した安室でさえも感情が漏れていることは意外だった。
それに付随して、こんなにも周りにばれておきながら進展もない自分達が馬鹿らしく思えた。
「…やっぱり話したほうがいいですか?
立つ鳥跡を濁さずで、黙って辞めようかなって思ってたんですけど」
そう言うと、マスターは眉を下げた。
「君はいいかもしれないけど、
あの安室君だよ。一筋縄でいくのかな」
興味があるものにはとことん調べ尽くす彼だ。
色々なものを使ってAの居場所を突き止めようとする姿が容易に想像ついて、
「やめときます。
余計に安室さんを煽りそうな気がします」
「僕もそのほうがいいと思うよ」
二人で笑い合う。
「マスター、私ってそんなに分かりやすいですか?」
そう尋ねれば、
「安室君の前にいるAさんは分かりやすいよ」
嬉しそうに言った。
.
498人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Nattu(プロフ) - 白雨さん» 白雨さん初めまして!キッドも二面性があるという点で何度かこの作品のキーマンになりつつ、青子ちゃんいるしなあ〜の気持ちでした!笑でも、書いてみたい欲はこの作品に出てくるくらいなのでチャレンジしたいと思います!大好き、ありがとうございます* (11月6日 16時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
白雨 - シリーズの最初の頃から毎日読ませて頂いてます。大好きです!((次回作について、怪盗キッド落ちを希望します! もちろんキッド様には青子ちゃんがいますが、この作品で何度か出ているキッド様が好きで…ご検討して下さったら嬉しいです!これからも応援しています! (11月5日 10時) (レス) @page19 id: f5a7983f74 (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - かるぴんさん» かるぴんサンありがとうございます!私の作風(?)に合わせてヒロくんをリクエストをいただきありがとうございます;;作風まで言われることは滅多にないのでとても嬉しいです‼︎穏やかお兄さんヒロくんも迷いますね…検討させていただきます!ありがとうございます (10月20日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - 紫苑さん» 紫苑サン、いつもありがとうございます!またリクありがとうございますー!赤井さん愛され〜クールだからこそ見てみたい感はありますね…ンン迷う…参考にさせていただきます‼︎ありがとうございます! (10月20日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 新たな展開にワクワクです。この小説が毎日の楽しみです!次回作を検討されているとのことですが、私は諸伏景光を希望します!Nattuさんの柔らかて温かい文章ととてもマッチすると思います!これからも応援してます!お体に気をつけて(*´-`) (10月20日 3時) (レス) @page1 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Nattu | 作成日時:2023年10月18日 16時