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二十一話 ページ23

その言葉にAの瞳は情けなく揺れてしまった。

「私だけ求めるは‥‥少しワガママじゃない?」

 Aは少しだけ困ったように笑う。

「なぁにがワガママだ。一応言うけどな、アイツがどーでもいいような女に連絡寄越して、何回も抱くかよ。アイツもアイツなりにお前のこと求めてんだよ。わかるか?」
「それは体だけでしょ‥」
「お前はアイツが身体だけの関係のやつに好きだとか言うとでも思ってんのか」
「でも、恋人でもなかったし」
「向こうはそう思ってた」

 え、と溢すAを無視して凛がずばりと答える。


「兄貴はお前のこと恋人だと思ってるに決まってんだろうが」


 Aは息を殺された。
 動揺のせいで目の焦点が定まっていない。うそ、と小さく溢せば、はぁーーとまたもや大きくため息を溢す凛。


「アイツがお前に向ける視線が、他の奴と同じだと思ったか?」


 薄れることのない記憶がさあと頭を、心涼め、じんわりと心の中を探し回る。

 たまに向けられる冴の優しい表情は機嫌が良いものかと思っていたが、それがもし、矢先が自分であったとしたらと。



 ぶわり。



 肌が浮き立つ。
 身体中の隅々が熱に浮かされたように暑い。
 茹蛸だ。自分でもわかるほど顔に熱が集中する。

 もう何年も前に失くした気持ちなのだと、あの場所に置いてきたものだと思っていた。
 けれど時を経てこうして目にすることで、わかってしまったことがある。
 きっとあの頃から当時認識していたよりもずっとずっと、彼のことを大切に思っていた。
 きちんと恋に堕ちていた。
 冴とまた寄りを戻せるのならと小さく縋ってしまうくらいには。


「ごめん、凛くん。本当にごめん。私から出ていったのに、わ、私、まだ冴のそばにいさせて欲しいと思うくらいには、本当に好きなんだって気づいちゃった、、ほんとに、ずるいし、ワガママだよね」


 ほとんど無意識だった。



「それでも、それでも‥間に合うかなぁ‥?」



 最初で最後よ、と、ほとんど泣きながら言ったAの台詞は思ったより弱々しくて、痛々しくて、力強かった。


「間に合わせんだよ、タコ。腹括れ」

 
 凛は素っ気なく言ったと思うと、途端に泣き崩れたAを支えるように彼女の身体に手を回した。

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なぎねぎ - すごくおもしろかったです。女の子の性格がとても好きでした。 (1月12日 20時) (レス) @page32 id: eca7262407 (このIDを非表示/違反報告)
黒灰白有無%(プロフ) - 完結おめでとうございます!題名からビックリし惹かれまして読み進めていったらこんなにも面白い作品とは思いませんでした!!ビックリ展開多かったですけどとても面白かったです!お疲れ様でした (2023年4月1日 6時) (レス) @page32 id: 00e0ebd256 (このIDを非表示/違反報告)
Joke(プロフ) - 完結おめでとうごさいます!このお話が出てきたときからのファンで、友達にも紹介するほど好きだったので完結してとても嬉しかったです!改めて完結おめでとうごさいます! (2023年3月28日 1時) (レス) id: 61b77d541b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉ずっと陰ながら応援させていただいてました!!!この作品滅茶苦茶好きです!改めておめでとうございます! (2023年3月18日 11時) (レス) @page32 id: 12afbbff79 (このIDを非表示/違反報告)
ちわこ(プロフ) - ひやああああ面白いっ!!更新楽しみにしてます!!! (2023年3月13日 23時) (レス) @page29 id: 743e31f7de (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:じゃじゃー麺 | 作成日時:2022年12月19日 16時

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