十三話 糸師冴目線 ページ15
Aは普段は控えめで大人しそうな少女だった。冴はそのギャップを大変魅力的に感じたし、笑顔が可愛いとも思ったが(見たことはないけど多分可愛い)、どんなに可愛く思えても彼女はまごうことなき訳ありの家庭であった。
両親共に蒸発。
もう何年も戻ってこないのだから帰る見込みもない。
保険証を落としたことが彼女の致命的な過ちだった。
深夜までのバイト、痩せこけている四肢。
ここまでの条件が揃えば、彼女が孤児であるということが容易で想像できた。
そこにあるのは根本的な恐怖であり、Aは冴も驚くほどひどく動揺した。
顔色が悪い、嫌な思い出が瞬時にフラッシュバックしたのか目の焦点がぐらぐらと揺れている。
まずい。
彼女の心は思っていたより、冴が会う前から限界を超えていた。
ここまできたらもはや言葉の施しは意味がない、強行手段に出ても彼女をここから引き離さなければ待っているのは死だ。
運良かったことが、彼女にとって冴は晴天のは霹靂であり冴にとってもそうだった。
いわば、一種の共依存。
冴の甘い提案にAが逆らう術はなかった。
そのまま流されるように冴はAを手にした。
A望めば、世界から取り揃えた物でプレゼントしたし、家に帰れば「おかえり」と質素な声が返ってくるのを冴は大変好ましく思っていた。
お互い好きな恋人同士だと疑いもしなかった。
糸師冴は恋人であるAを衷心から愛している。しかし、蓋を開ければ残念ながらその想いは一匙ほどもAに伝わってはいなかった。
しかしことは起きた。
「ぁ‥‥冴‥‥嫌っ‥」
目の前に広がるAの裸体。
糸師冴は初めてAを手荒に抱いた時のことを曖昧にしか覚えていない。
色んなことが起きすぎたのだ。
だからか、その鬱憤を、思わず、本能が欲するままに、後先も考えずまともに意識がないままAにぶつけた。
思い上がりだった。
気づけば目に光を灯していないAが喘ぐように涙を溢している。流しすぎた涙の跡が痛いほど綺麗な顔に跡を残していた。その顔には悲痛とも言える表情しかないことが痛いほどわかり、冴は罪悪感で死にたくなった。
ほとんど気絶したように眠りにつく彼女の身体を強く強く抱きしめる。
途端に冴は絶叫する。
Aの表情を思い出すたびに心臓が鈍器で抉られたように痛んだ。
平等なんかじゃなかった最初から。
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なぎねぎ - すごくおもしろかったです。女の子の性格がとても好きでした。 (1月12日 20時) (
レス) @page32 id: eca7262407 (このIDを非表示/違反報告)
黒灰白有無％(プロフ) - 完結おめでとうございます！題名からビックリし惹かれまして読み進めていったらこんなにも面白い作品とは思いませんでした！！ビックリ展開多かったですけどとても面白かったです！お疲れ様でした (2023年4月1日 6時) (レス) @page32 id: 00e0ebd256 (このIDを非表示/違反報告)
Joke(プロフ) - 完結おめでとうごさいます！このお話が出てきたときからのファンで、友達にも紹介するほど好きだったので完結してとても嬉しかったです！改めて完結おめでとうごさいます！ (2023年3月28日 1時) (レス) id: 61b77d541b (このIDを非表示/違反報告)
虹(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉ずっと陰ながら応援させていただいてました！！！この作品滅茶苦茶好きです！改めておめでとうございます！ (2023年3月18日 11時) (レス) @page32 id: 12afbbff79 (このIDを非表示/違反報告)
ちわこ(プロフ) - ひやああああ面白いっ！！更新楽しみにしてます！！！ (2023年3月13日 23時) (レス) @page29 id: 743e31f7de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：じゃじゃー麺 | 作成日時：2022年12月19日 16時
