十話 ページ11
だから、その後も求められるままに冴に抱かれて、私から拒否することはなかった。
Aが知っていたはずの冴は気高く、光を纏っていて、Aにとっての道標のような存在だった。
いつの間にか流れ出していた涙が顎を伝い、硬めのフローリングが効いた床に水滴を残す。
ああ、これは。
気づかなければよかった。
気づきたくなかった。
彼に対する感情が理解でき、Aの眉間に皺がよる。
そうでもなければ今までの行為にAの心は今にも張り裂けそうだ。
あの人は今何をしているんだろう。
言葉は交わさない行為は、Aの心を犯し、侵食し始めていた。
無事なんかじゃない。彼は私が望めば全部くれるようになった。しかし、Aの心は日に日に硬直して行くような気がした。
そしていつの日にか、『あの子』が現れた。
※
冴とそういう関係になってしばらく経ってから、Aは妊娠した。
「妊娠かぁ、弱ったなぁ」
揺れる電車内で突如そんなことを考える。
膨らみもない薄い腹をさすりながら、この中に子供がいることに対して感嘆の息を漏らす。
いくらなんでも冴に打ち出す勇気などなかったため、Aは逃げるように家から離れた病院に駆け込んだ。
『死ぬまで面倒見てやる』
旅立つ時に冴に言われた言葉を思い出した。
あの言葉を持ってしても、多分彼は私の妊娠を眼中にいれていない。正直、何の生産性もない関係を惰性だけで長く続け過ぎたと思っているくらいだ。
Aは自分の気持ちを知っている以上、これ以上彼の言いなりになるつもりは毛頭なかった。
彼と関わるのはこれ以上。
よって、冴には伝えず。一人で育てることにした。
それに加えて、この機械を機にAは冴に見つからない遠く離れたところに住むと決めた。
Aは冴が「使える分は自由に使え」と手渡してくれたくれた通帳を今一度まじまじと確認する。現金の数だけを数え、ぎょっと目を見開いた。
「うそ‥‥なによこの額」
恐らく今まで目にしたことがない、0が何桁も連なっている数字をみた。途端に怖くなってパタンと通帳を閉じる。
とりあえずこれで資金の問題は恐らく、いや十分すぎるほど整った。
新天地は都会すぎず、田舎すぎず、景色の綺麗な土地がいい。男の子でも女の子でも自由に伸び伸びと育てられたら、それでいい。
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なぎねぎ - すごくおもしろかったです。女の子の性格がとても好きでした。 (1月12日 20時) (
レス) @page32 id: eca7262407 (このIDを非表示/違反報告)
黒灰白有無％(プロフ) - 完結おめでとうございます！題名からビックリし惹かれまして読み進めていったらこんなにも面白い作品とは思いませんでした！！ビックリ展開多かったですけどとても面白かったです！お疲れ様でした (2023年4月1日 6時) (レス) @page32 id: 00e0ebd256 (このIDを非表示/違反報告)
Joke(プロフ) - 完結おめでとうごさいます！このお話が出てきたときからのファンで、友達にも紹介するほど好きだったので完結してとても嬉しかったです！改めて完結おめでとうごさいます！ (2023年3月28日 1時) (レス) id: 61b77d541b (このIDを非表示/違反報告)
虹(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉ずっと陰ながら応援させていただいてました！！！この作品滅茶苦茶好きです！改めておめでとうございます！ (2023年3月18日 11時) (レス) @page32 id: 12afbbff79 (このIDを非表示/違反報告)
ちわこ(プロフ) - ひやああああ面白いっ！！更新楽しみにしてます！！！ (2023年3月13日 23時) (レス) @page29 id: 743e31f7de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：じゃじゃー麺 | 作成日時：2022年12月19日 16時
