◇ ページ39
「今日は、本当にありがとう」
「わ、私こそ」
近くの遊歩道を並んで歩く。日はもう沈んで、西の空だけがまだ薄く色づいていた。
父さんたちが風丸君のお母さんと手続きなんかの話をしている間、席を外しても良い許可が出たから、少し外に出ることにした。
緑川達のところに紹介しに行くかどうかで迷ったんだけど。それはまた次の機会でも良いかなって。
今は、Aと二人で居たいと思ったんだ。
「明日から、改装業者が入るんだ。その後、新しい家具や荷物を運び込んで、準備が整うのは来週かな」
「そんな、何から何まで…本当にありがとう」
「ふふっ、もうAはお日さま園の一員だ。だから何も気にすること無いよ」
俺の言葉に照れ笑いを浮かべるA。
立ち並ぶ家々から零れる温かな光が、そこに人が居ることを教えてくれているけど、俺達の周りには誰も居ない。
散歩する人や、楽しそうな犬の声で賑わう時刻は、もう過ぎてしまっているから。
二人きりなのに、お互いの手に触れようとすることもないのは、まだまだ二人の空間ってものに緊張が残っているからだろう。
この距離に満足しているなら、そのままでも良いかもしれない。けれど、俺はもう冷静を装うには限界らしい。
「A」
「ん？」
「…Aに、学校で変なこと言っちゃった時から、さ。Aの声を聞いたり、こうして君の顔を見ていると…その、余計なことを考えてしまうんだ」
「…そ、そうなんだ。えへへ、何だか…照れちゃうな」
自分から口を開いておいて、自分が言っていることに赤面する。俺達の視線は、お互いの足元に落ちた。
「…次」
「ん…？」
「次に会った時。二人きりになれた時…」
俺は足を止めた。Aも数歩先で振り返り、足を止める。
もう一度口に出すのは正直恥ずかしい。でも、Aのことを傷付けたくは無いから…もう一回、ちゃんと確認しておきたい。
「キス、してもいいかな？」
「…！」
Aはあの時と同じように目を見開いた。頬が赤くなっていく。
「…うん。して欲しい」
恥ずかしかった。でも同時に、嬉しかった。彼女の意思でそう言ってもらえたのが。夢みたいだった。
そして俺も。晴矢や緑川に言われたからじゃない。俺がしたい、そう思ったから。
それ以上何も言わず、俺達はお日さま園まで、そっと遠慮がちに手を繋いで帰った。
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輝(プロフ) - 布都御霊さん» コメントありがとうございます。最後まで完結できたのは皆様のお陰です！温かいお声、本当にありがとうございます(*^^*)キュンキュンできるようなお話を書けるようこれからも精進して参ります！ (2019年6月24日 20時) (
レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
布都御霊(プロフ) - 「君に、初めまして」完結おめでとうございます。何度も泣かせていただきました(泣)もう、この2人の初々しい見てるだけでキュンキュンするようなお話が見れなくなるのかと考えるとまた涙がぁ〜。(/_;) (2019年6月17日 3時) (レス) id: ac233dda56 (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 明日香さん» いつもコメントありがとうございます(^^)出来るだけ早く更新できるよう頑張ります…！ (2018年8月5日 7時) (レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
明日香 - 久しぶりの更新ですね...！ずっと待ってました！！ありがとうございます^ ^今回も楽しく読ませていただきました。次回の更新も楽しみにしていますね！ (2018年7月31日 20時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 大丈夫ですよ^^更新されるまで、気長にずっと待ち続けます。応援してますね^^ (2018年6月18日 22時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2018年3月26日 16時
