◇ ページ38
父さんの部屋の前で待っている間、息が詰まりそうなくらいまだドキドキしていた。
襖を開けて中に入ることも出来た筈だけど、敢えてしなかったのは言うまでもない。
こんな状態で、Aに会うのは嫌だ。もう少しだけ、心の準備が必要だった。
だって彼女が、家に住むことになるかもしれない。毎日を一緒に過ごせるようになるかもしれない。
こんなこと晴矢に言ったら、下心丸見えとか言いたい放題言われるんだろうな…。
俺はこれからもAと、一緒に居たい。隣に居て欲しい。
でもその為に、彼女に何かを求めるつもりはなかった。彼女は彼女のまま、俺はA自身が好きだから。
だから無理に、俺達の元へ来なくたって良い。離れていたとしても、俺はAのことずっと想っていられる。
だって俺は、ずっと君が好きだったんだ。ずっと探していたんだ。
視線を天井と壁の境い目辺りまで上げて、これまでのことを思い出す。ここまで来るのにそう時間はかかっていない。けれど、色んなことを乗り越えてきた。
Aは、きっと誰からも愛される人。ただその人柄が、まだ幼い心に妬みを生んだ。仕方ないと、割りきるしかない。他人の心は、自分ではどうすることも出来ない。
ここに居る俺達は、皆そうだ。自分で願ってここに来たんじゃない。毎日笑顔で過ごす裏には、耐えようのない痛みと悲しみに暮れた過去がある。
皆違うけど、同じような傷がある。だから誰も、ここに居る家族を傷付けることはしないよ。
A。君は沢山出会ってきた人間の中から俺を選んでくれた。
俺は風丸君のような包容力のある人間でも、アフロディのような秀才でもない。円堂君みたいに明るくて、前向きな人間でもない。
風介みたいに冷静じゃないし、晴矢のように情熱的でもない。
けどAは俺を選んでくれた。俺はそれだけで…それだけで、本当に幸福者だよ。
十分幸せだから、選択は君の意思に任せて欲しい。俺の為とかそういうのは無しにして、君が選びたい方を。
と、視界の端で襖が開くのが見えた。そこからAが顔を覗かせる。
「A」
「ヒロト君、ずっと待ってたの？」
「いや、もうすぐ話が終わるって玲名から聞いて」
続くように、風丸君のお母さんが部屋から出てきて、そして俺の前で深々とお辞儀をした。
「どうかAを…大切にしてあげてください」
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輝(プロフ) - 布都御霊さん» コメントありがとうございます。最後まで完結できたのは皆様のお陰です！温かいお声、本当にありがとうございます(*^^*)キュンキュンできるようなお話を書けるようこれからも精進して参ります！ (2019年6月24日 20時) (
レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
布都御霊(プロフ) - 「君に、初めまして」完結おめでとうございます。何度も泣かせていただきました(泣)もう、この2人の初々しい見てるだけでキュンキュンするようなお話が見れなくなるのかと考えるとまた涙がぁ〜。(/_;) (2019年6月17日 3時) (レス) id: ac233dda56 (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 明日香さん» いつもコメントありがとうございます(^^)出来るだけ早く更新できるよう頑張ります…！ (2018年8月5日 7時) (レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
明日香 - 久しぶりの更新ですね...！ずっと待ってました！！ありがとうございます^ ^今回も楽しく読ませていただきました。次回の更新も楽しみにしていますね！ (2018年7月31日 20時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 大丈夫ですよ^^更新されるまで、気長にずっと待ち続けます。応援してますね^^ (2018年6月18日 22時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2018年3月26日 16時
