◇ ページ34
「…へ？」
沈黙の後、先に声をあげたのはAだった。俺の良い放った言葉が解読不能だと言わんばかりに、固まった顔で俺を見ている。
だけど俺は、多分彼女と同じくらい混乱していて、簡単な返事を考えることさえも容易くない。
咄嗟に出来たのは、彼女の手を離すことくらいだった。
「ご、ごめん…！忘れてっ…」
言ったことを、無かったことには絶対に出来ない。でも俺はこの瞬間の記憶が、お互いの中から消えることを心から願った。不可能なことは百も承知で。
鼓動が激しく波打つ。さっきとは違う、息苦しさを伴って俺の息を荒くする。
Aのこと、分かってたのに…こんな馬鹿みたいなことを言ってしまうなんて。何と思われただろう。幻滅されたって仕方がない。
「っ…」
恥ずかしさを通り越して、情けなくなる。
「ヒ、ヒロト君…ごめん、ちょっとびっくりして…」
謝るべきは俺なのに、彼女はそうやって俺の顔を覗き込む。
激しく脈打つ心臓は、どっちが理由で俺を苦しめているのか分からない。
「あの…ヒロト君は、やっぱり…したいと、思うかな？」
「…！いやっ、俺は…ただ…」
君がしたいのかどうかを考えていたなんて、この状況ではもう言えない。俺は開いた口をつぐんだ。
「…ヒロト君が良いなら、私は良いよ」
けれどその言葉で、俺の口は小さく開いたまま動かなくなる。
「ヒロト君となら、きっと怖くないから。それに、それが好きってことを伝える一つの方法だとしたら…」
「ヒロト君に伝えたい。…ヒロト君が好きだって気持ち」
こんなにも、こんなにも想いが溢れることは、彼女と出会うまで一度も無かった。
簡単に言葉では表せない。抱き締めたくて触れたくて、ただ感情に任せるまま彼女を抱き寄せた。
「本当に良いの？俺が…俺が相手でも、嫌じゃないかな？」
「嫌だなんて、思えないよ。…ヒロト君だから、だよ」
すぐ側で聞こえる優しい声。滑らかな頬と、シャンプーの香り。全てが愛おしくて、手放したくなくて。
誰かに取られるわけでもないのに、背中に回した腕にぎゅっと力を入れた。
「…でも、ヒロト君」
「ん…もうちょっとだけ」
休憩時間が終わるまであまり時間が無い。俺は充電をするかのように、暫くの間ずっと彼女の首筋に顔を埋めていた。
「今度は…キスしても良い？」
「…うん」
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輝(プロフ) - 布都御霊さん» コメントありがとうございます。最後まで完結できたのは皆様のお陰です！温かいお声、本当にありがとうございます(*^^*)キュンキュンできるようなお話を書けるようこれからも精進して参ります！ (2019年6月24日 20時) (
レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
布都御霊(プロフ) - 「君に、初めまして」完結おめでとうございます。何度も泣かせていただきました(泣)もう、この2人の初々しい見てるだけでキュンキュンするようなお話が見れなくなるのかと考えるとまた涙がぁ〜。(/_;) (2019年6月17日 3時) (レス) id: ac233dda56 (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 明日香さん» いつもコメントありがとうございます(^^)出来るだけ早く更新できるよう頑張ります…！ (2018年8月5日 7時) (レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
明日香 - 久しぶりの更新ですね...！ずっと待ってました！！ありがとうございます^ ^今回も楽しく読ませていただきました。次回の更新も楽しみにしていますね！ (2018年7月31日 20時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 大丈夫ですよ^^更新されるまで、気長にずっと待ち続けます。応援してますね^^ (2018年6月18日 22時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2018年3月26日 16時
