◇ ページ31
抱き寄せた彼女は、その華奢な肩をさらに縮こまらせて、そっと俺に体を預けた。
いつもは触れられない、洗いたての彼女の髪。柔らかい手触りは変わらないけど、何度も俺を魅了してきたシャンプーの香りが、今はさらに濃密に俺を包み込む。
「…怖くない…？」
すぐ側にある彼女の耳にそう尋ねると、恥ずかしそうに小さく首を縦に振る。
そんな仕草を見て、俺も何だか恥ずかしくなった。
今、彼女がここに、俺の腕に包まれて顔を赤らめながらも、全てを委ねてくれている。最初は触れることさえままならなかったのに。
部屋に、異性と二人。相手が相手なら、どんなことになってもおかしくないこの空間で、俺の浴衣の襟辺りをキュッと握っている。
それは、俺を信頼してくれているからこそ。
「…！き、基山くっ…」
「ふふ、ヒロトって呼んでくれるんじゃなかったの？」
つい一人で浮かれて、抱き締める腕に力を入れると、Aは急に沸騰したように真っ赤になって、俺の胸板を押して体を反らした。
「だ、だって…」
「…ごめん、冗談。Aが呼びたい方で良いんだよ」
「…ヒロト君…が、良い…」
キラキラと瞳は俺を映して、潤んだ唇がそんな言葉を紡ぐ。同時に俺の中に込み上げてきた衝動。
まるでその一瞬で、俺が今まで頭の中に築き上げてきたもの全てが消え去ったように。
聞いてきた、学んできた語彙が全て飛んでいったみたいだった。
「…可愛いね、A」
それ以外の言葉では、この気持ちは説明出来なかった。驚くほど、これが今の自分にはまったんだ。
しかも無意識の間に、既に俺の口からその感情は零れていた。
体温が一気に急上昇しているのではないか。そう思わずにいられないほどに、俺の顔は熱くなった。
「ぁ、ごめん、何かっ…き、気にしないで…！」
格好悪い、自分でもそう思った。だからまた恥ずかしくなった。体温が上がり続けている。
「う、ううん…ありがとう…」
でも彼女が俯いて素直にお礼なんて言ってくれるから、どうしようもなくなって、俺は彼女の首筋に顔を埋めた。
「恥ずかしい、な…」
「そんなの、私も一緒だよ…」
お互いの距離は０。なのにお互いの顔は見ずに、きっといつもより高い体温だけ、共有している。
晴矢の言う一歩はきっとここで止まらないだろうけど。
俺にとっては、大きすぎる一歩だ。
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輝(プロフ) - 布都御霊さん» コメントありがとうございます。最後まで完結できたのは皆様のお陰です！温かいお声、本当にありがとうございます(*^^*)キュンキュンできるようなお話を書けるようこれからも精進して参ります！ (2019年6月24日 20時) (
レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
布都御霊(プロフ) - 「君に、初めまして」完結おめでとうございます。何度も泣かせていただきました(泣)もう、この2人の初々しい見てるだけでキュンキュンするようなお話が見れなくなるのかと考えるとまた涙がぁ〜。(/_;) (2019年6月17日 3時) (レス) id: ac233dda56 (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 明日香さん» いつもコメントありがとうございます(^^)出来るだけ早く更新できるよう頑張ります…！ (2018年8月5日 7時) (レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
明日香 - 久しぶりの更新ですね...！ずっと待ってました！！ありがとうございます^ ^今回も楽しく読ませていただきました。次回の更新も楽しみにしていますね！ (2018年7月31日 20時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 大丈夫ですよ^^更新されるまで、気長にずっと待ち続けます。応援してますね^^ (2018年6月18日 22時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2018年3月26日 16時
