◇ ページ25
『もしもーし？勉強捗ってる？』
断りを要れて電話に出ると、耳元で俺に語りかけてきたのは緑川だった。俺が今こっちで何をしているかなんて知る由も無いから、軽い調子でそう尋ねてくる。
しかし今の俺としてはそんなことどうでもよくて、今のこの状況を話せる相手を見つけたことで頭が一杯だった。
「み、みみ緑川…ちょ、ちょっと助けて…」
『な、何っ…？！何かあったの？その動揺っぷり…』
意識しようにも何故か口が回らない。俺は一、二回深呼吸をしてから、もう一度震える声で切り出した。
「実はっ…」
『お、なになに？ヒロトと電話してんの？』
『今は休憩中か、ヒロト？』
それなのに、聞き覚えのある声が割り込んでくる。俺は言いかけた言葉を飲み込み、落ち着くよう胸に手を当てながら電話越しの緑川に問いかけた。
「今、スピーカーにしてる…？」
『あ、うん…切った方が良い？』
「その方が助かる…」
まだ口に出すに至っていなくて良かったと内心安堵しつつ、快く了承してくれた緑川の声を待った。
遠くから晴矢のものらしき声が聞こえるけど…今は関係ない。
『はい、OK。切ったよ。…で？どうしたのさ？』
俺は自分がさっきより冷静になったのを確認してから、神月さんと同室で、その上二人っきりで一晩を過ごすことになったことを話した。
話を進める間に、落ち着いてこの状況を整理したせいでまた頭が事実を受け止められず混乱し出し、俺はまた一旦口を閉じる。
『それは…すごく美味しい状況じゃないの？』
予想出来ていたその返答に、分かっているんだけど…と意図しない程弱々しい声が出た。
「二人、もう付き合って二ヶ月以上経つのに未だに名前呼びもしてないでしょ？」
「うん…普通は呼ぶものなの？」
「そりゃそーだよっ。名前で呼ぶだけでも距離はぐーっと縮まるんだよ？ヒロトは呼ばれたいとか、呼びたいとか思わないわけ？」
その問いに俺は今出来る最大限の想像力を働かせた。俺の頭の中で、神月さんが俺の名前を呼んで笑う。
「…思う」
『なら、この機会に名前呼びデビューしちゃお…あ』
緑川の声に頷く前に、彼の声が遠ざかる。俺は音量ボタンを触ったかと思い、画面を耳から離した。
『おいヒロトッ！そーいうことは俺に聞けよな！！』
それでも十分俺の耳に響いた晴矢の声に、俺は思い切り顔をしかめた。
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輝(プロフ) - 布都御霊さん» コメントありがとうございます。最後まで完結できたのは皆様のお陰です！温かいお声、本当にありがとうございます(*^^*)キュンキュンできるようなお話を書けるようこれからも精進して参ります！ (2019年6月24日 20時) (
レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
布都御霊(プロフ) - 「君に、初めまして」完結おめでとうございます。何度も泣かせていただきました(泣)もう、この2人の初々しい見てるだけでキュンキュンするようなお話が見れなくなるのかと考えるとまた涙がぁ〜。(/_;) (2019年6月17日 3時) (レス) id: ac233dda56 (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 明日香さん» いつもコメントありがとうございます(^^)出来るだけ早く更新できるよう頑張ります…！ (2018年8月5日 7時) (レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
明日香 - 久しぶりの更新ですね...！ずっと待ってました！！ありがとうございます^ ^今回も楽しく読ませていただきました。次回の更新も楽しみにしていますね！ (2018年7月31日 20時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 大丈夫ですよ^^更新されるまで、気長にずっと待ち続けます。応援してますね^^ (2018年6月18日 22時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2018年3月26日 16時
