◇ ページ47
神月さんと俺の間を、夕方の風が通り抜けていった。
どうしても途切れ途切れになる俺の言葉にも、神月さんはそっと耳を傾けてくれていた。
何度も言葉に詰まって、チラリとその顔に目を向けると、彼女はその度に優しく笑って見せてくれる。
「…小さい頃のことは、あまり覚えて無くて。お日さま園で過ごすようになってからが、俺の一番古い記憶」
こうして、人に自分のことを話すのは初めてだから、声が震えて仕方なかった。でも、俺の手に触れている神月さんの手が、俺の中にある小さな恐怖を消してくれる。
大丈夫。って、言ってくれているみたいに。
「父さんは最初から、引き取った子供に自分の会社を継がせるつもりだったらしい。本当の息子は…事故で、亡くなったんだって」
「…そう、なんだ…」
「俺の名前は、その人の名前を取って付けられた。父さんは自分の息子と俺を重ねて、俺を財閥の後取りにすることを決めたんだ」
漠然とした未来に向かって、何も分からないまま必死に勉強した。ただ机に向かった。
遊びに行くことも殆ど無かったし、友達を作ることだって無かった。学校は、ただ勉強するための場所だった。
「サッカーも、父さんに薦められて始めた。広いフィールドの上で相手の動きと、仲間の動きを見ながらプレーしないといけないから」
＿＿大変な頭脳を必要とする競技です。サッカーを通して、素早く考え計算することを学びなさい。
サッカーも勉強の一部だった。俺も最初は、そうとしか思っていなかったし。
「父さんの息子も、サッカーをしていたんだって。だから本当は父さん、俺にもサッカーを好きになって欲しかったのかな…なんてさ」
「基山君の才能、本当は見抜いてたのかな？」
クスクスと笑って、神月さんは目の前に広がるオレンジ色の夕焼けを見つめた。彼女の黄色い瞳に光が映って、混ざり合う。
「…私てっきり、基山君は学園長に縛られて、辛い思いばかりしていると思ってた」
「え…？」
「今の基山君、とっても優しい顔だよ」
神月さんの言葉で、つい自分の顔に触れてしまう。そんな顔、していたかな。
確かに、決して自由じゃなかった。だけど絶対に父さんは、俺に愛を注いでくれていた。
「…どんな形でも。父さんは、俺の父さんだから」
だからこそ。俺の気持ちを認めてほしい。
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狩間篤花(プロフ) - リベリさん» コメントありがとうございます！お久しぶりですー(°▽°)二人の関係、楽しんで書かせてもらっています！四章の方で頑張っておりますので、そちらもよろしくお願いいたします(о´∀`о) (2018年1月4日 22時) (
レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
リベリ - お久しぶりです!!本当にいつ見ても感動します!!風介...二人の為に...優しいですね!!どんどんいい方向に進んでいますし、二人が進展する事を願っています!!頑張って下さい!!^ω^/ (2017年10月29日 2時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - リベリさん» 心配をお掛けして申し訳ございません…！出来るだけ更新できるよう、最善を尽くして参ります(о´∀`о) (2017年9月5日 23時) (レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
リベリ - 狩間篤花さん» わぁ...！本当ですか！？嬉しいです！！更新なさっていなかったので、心配しました...！これからも更新頑張って下さい！！ (2017年9月2日 17時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - リベリさん» これから大会編の方も更新していきますので、よろしくお願いいたします(о´∀`о) (2017年9月1日 22時) (レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2017年6月27日 16時
