◇ ページ32
朝、七時半。いつもならまだ家に居る時間だけど、今日は違った。
いつもは混雑しているロッカー前も、寂しいほどに誰も居ない。人の熱気が無いせいか、朝の涼しさが一段と感じられて俺は腕を擦った。
渡り廊下を通り、教室とは逆の校舎へと向かう。二階の突き当たりにある部屋は、一年の時の部活紹介以来、来たことがなかった。
…引き戸を開けると、扉にかかっている「天文部」と書かれた手作りのプレートが、静かに揺れた。
中に足を踏み入れたら、ごちゃごちゃとした部室の真ん中で、熱心に何かを書く彼女が居る。
「…神月さん」
髪が大きく揺れて、神月さんの綺麗な瞳が俺を捕らえる。邪魔をしたかと思ったけど、彼女は柔らかい笑顔を見せて。
その顔が、すごく恋しかったんだ。
「…基山君…！ごめんね、電車通学なのに朝早く…」
「ううん、大丈夫だよ。…それに、俺も神月さんと話したかったから」
嬉しい、と笑う神月さんは、本当に心から喜んでくれているようで、少し安心した。
扉を閉めて、彼女が座っている席に近付いていくと、さっきまで書き込んでいたのであろうノートに、沢山の文字が並んでいた。
所々に、この季節の星座が描かれている。
「…これね、星の観察記録。昨日の当番は私だったの」
「へぇ…」
手にとって一文一文を頭に入れていく。星座のスケッチを取っている神月さんを、頭の隅で想像しながら。
「うん…凄く、綺麗に書かれてる。星に興味がない人でも、これならきっと面白いと思うよ」
「…えへへ。基山君が言うなら、きっとそうだね」
「え？」
「照美君から聞いたよ。基山君も、星が好きなんでしょ？」
アフロディ、神月さんに話してくれてたんだ…。にこりと笑って細くなった彼女の目には、共通の趣味を持つ俺への期待の色が滲んでいる。
そこには、あの日の悲しみなんて少しも感じなくて。ホッとして、目の奥が熱くなるような気がした。でも、まだ早い。
「それで…その、話って言うのは？」
「…うん。そこ、座って」
今日の朝気付いた、神月さんからのメッセージ。昨日は早く寝てしまったから気付けなかったけど、その文面に心底驚いたんだ。
＿＿二人で話がしたい。
神月さんは部活があるからもう学校に居るって言うから、俺はすぐに準備をして、家を飛び出した。
どうしても、神月さんに会いたかったから。
ラッキーカラー
あずきいろ
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狩間篤花(プロフ) - 真白さん» ありがとうございます(°▽°)世界観としては、単眼のセレーネの平行世界…という設定になっていますので、この先の展開もお楽しみに…(^○^) (2017年4月5日 7時) (
レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 単眼のセレーネから来ました!アレスの天秤を舞台にした作品…！展開が楽しみです!にしても神月ちゃんが出てくるとは…！ (2017年4月4日 20時) (レス) id: f20ddfb271 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2017年4月3日 22時
