2話 ページ3
「しー！」
カタン、と梯子がかけられ、塀を超えたのは町に住むリカちゃん。
「あ…！ちょっと、きみ危ないよ！！」
手に持ってるのは、おにぎり。
ゾロは自分の方に向かってきたリカちゃんを、鬼の形相で見つめた。
「おい、なんだてめェ。
殺されてェのか…消えなチビ！！」
「あのね、私おにぎり作ってきたの！
お兄ちゃん、ずっとこのままでおなか空いてるでしょ？
私初めてだけど一生懸命作ったから…」
「ハラなんかへっちゃいねェ！！
そいつ持ってとっとと消えろ！！」
ゾロは自分にこんなことをしたと知られちゃ、あの子が危ないことを知ってるからこんな酷いことを言うんでしょ？
不器用だから、こんなことしか言えないのよね。
でもね、言い過ぎ。
「でも…」
「いらねェっつったろ！！
帰れ！！踏み殺すぞガキ！！！」
するとそこへ、海兵を引き連れたバカがやってきた。
「ロロノア・ゾロォ！
イジメはいかんねェ、親父にゆうぞ」
「また変なのが出たな」
「あれはきっと海軍のえらい人ですよ…
よかった、あの子殺されなくて…」
「いや、どうかしらね」
そう、こいつはヒーローなんかじゃない。
ただのどうしようも無いバカだ。
「チッ、七光りのバカ息子が…」
「バカ？こら調子にのるなよ。
俺の親父はかのモーガン大佐だぞ！！」
それを七光りっていうんだよ…
「おやおやお嬢ちゃん、
おいしそうなおにぎり持って差し入れかい？」
「あ！だめっ！！」
リカちゃんが持ってきたおにぎりを、七光りバカはひょいとつまみ上げ、ひとくちぱくりと飲み込んだ。
「ぷへェっ、まずうっ！！
く、くそ甘ェ！！
砂糖が入ってんぞこりゃ。
塩だろうが！ふつうおにぎりには塩っ！！」
どうやら甘い方が美味しいんじゃないかと思っていたらしい。
初めておにぎりを作ったんなら、そう思ってもおかしくはない。
七光りバカはおにぎりを投げ捨て、足で何度も踏みつけ笑った。
ありなら食ってくれるという最低なセリフを残して。
しまいには海兵にリカちゃんを塀の外に投げ捨てるよう命令をした。
「あのバカっ！！」
怪我でもしたら…なんて、あんな奴には、あの子が怪我をしようがどうでもいいんだ。
女の子は、麦わら帽子の男がしっかりと受け止めた。
「こんなの見てられるかっ！！」
麦わらが塀の中に入っていくのが見えたが、もう私は聞く耳をもてず、リカちゃんとチビと共に町の方に歩き出した。
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作者名：ゆるだら | 作成日時：2020年3月22日 0時
