嫌われ者。5【青葉城西】 (ページ37)

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国「そんなのさ…」

その足を止めるようにボソッと呟いた英くんの声が背中に掛かる。

『…？』

私は気持ちが裏返らないように、そっと顔だけ振り向いた。

だけど、その数瞬後にはグイッと右腕を引かれて、気付けば自分と英くんの距離はほぼゼロ距離になっていた。

息がかかるほど近い距離。

あぁ。ダメだ。

画面越しに見ていた白黒の世界が、少しずつ色付いていく。

ねぇ。辞めてよ。

気持ちが簡単に裏返されてしまう。

国「そんなの、好きだからに決まってんじゃん！！」

その声は今まで聞いたことがない声だった。

こんなに声を荒げて喋る英くんが珍しくて、呆気にとられる。

だから、その台詞をちゃんと理解するのが少しだけ遅れた。

『…えっ？』

口から間抜けな一音がこぼれる。

理解した台詞はあまりに唐突すぎて感情も思考も置いていかれてしまっていた。

ただ、ガッチリと交わったままの目と掴まれたままの右腕が、現実だって事だけを知らしめる。

国「Aの事が好きだから辛いんだよ！」

理解に置いていかれた脳内に、また荒い声で私を刺す。

『…』

すぐ目の前で必死に喋る英くんは、ただ想いが溢れないように言葉を紡いでいるような。

拙くて、心を直接揺らしてくる。

国「好きだからっ！

Aの事気になるし、

Aこと心配だし、

Aに頼って欲しいって思うんだよ！」

『英くん…』

国「なのに、A、いっつも笑って大丈夫って言うからっ！

全然…隠そうとするから…

だから俺さ、すげぇ辛いんだよ。」

英くんは泣きそうに顔を歪めて、私の肩に頭を置く。

『…』

国「ねぇ、A…？

頼ってよ。

無理して笑わないでよ。

大丈夫って言わないでよ。

好きな人が、辛い思いすんのはすげぇ嫌だよ。

それで、頼ってもらえないのはもっと…嫌だ…」

声が震えていた。

自分の中で何か崩れていくようなそんな感覚と、

熱くなっていく目元と、

ツンっと痛む喉と鼻の奥。