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「えー、先日、生徒の財布が盗難されるという…」
HR中。
右から左へと担任の先生の声が流れていく。
私の頭の中はさっきの英くんの言葉で頭がいっぱいだった。
最後に言われた「ごめんね。」の意味。
表情。仕草。
全部が私の脳裏から離れなかった。
いくら考えても分からない。
なんで英くんにあんな表情をさせてしまったのだろうか。
私はまた何か英くんに迷惑をかけてしまっているのだろうか。
分からない。
私はいつだって英くんの事をなにも理解できない。
分かりたいと思う気持ちとは裏腹に。
きっとさよちゃんならもっと英くんの事を理解しているんだろう。
さよちゃんに相談すれば分かるだろうか。
そんな思考が頭の中で働く反面、それを嫌がる自分がいた。
羨ましい。
ずるい。
私はどんなに羨んだって、3年の差は埋まらない。
『馬鹿だなぁ…』
私はボソッと独り言を呟いた。
別に何が悪いわけじゃないのに。
気持ちがこんなに歪む。
さ「何がぁ?」
不意にそんな声が前から降ってきた。
『わっ!?』
私はその声に少し慄いて、我に帰る。
顔を上げればいつのまにかすぐそばにさよちゃんが立っていた。
さ「凄いボーッとしてるけどどーかしたの?」
きょとんとした顔を浮かべるさよちゃん。
『え?』
あたりを見渡せば、いつのまにHRが終わっていたのかクラスはすっかり騒めいていた。
さ「体調悪い…?」
『あ、いや…ううん。大丈夫だよ。』
さっきまでの嫌な思考が脳内にチラついて、ちょっとだけさよちゃんに罪悪感を覚える。
ごめんね。ずるいとか羨ましいとか思っちゃって。
心の中で謝っておく。
さ「ならいいけど、なんか悩み事?あたしでよければ聞くよ?」
さよちゃんが私の席の前に腰掛けて言った。
さよちゃんはどこまでも優しい。
きっと応援してくれるから。
相談してみようかな…
ずるいとか羨ましいとか思ってたって、私じゃ何も分からない。
だって好きも恋も初めてだから。
『あ、その…』
_私、英くんの事が好きみたい。
そう言おうとした目が、勝手にそのシルエットを追った。
教室のドアから出て行こうとする見慣れた後ろ姿。
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hiro(プロフ) - ひよひよさん» 本っっっ当に嬉しい!!応援されたら頑張っちゃいます( ̄^ ̄)ゞ (2020年10月2日 0時) (レス) id: e9391e3b89 (このIDを非表示/違反報告)
ひよひよ(プロフ) - 本っっっ当毎回面白い!!更新頑張ってください!応援してます! (2020年10月1日 17時) (レス) id: e32ea24965 (このIDを非表示/違反報告)
hiro(プロフ) - ゆゆさん» 多分告った…??チャイムが邪魔さえしなければ… (2020年9月23日 22時) (レス) id: e9391e3b89 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 国見くん…!!!絶対告った!今絶対告ったよね!!!! (2020年9月23日 21時) (レス) id: 861ee0d781 (このIDを非表示/違反報告)
hiro(プロフ) - たかめいさん» もうちょっと上手く伏線貼れればいいんですけど、なかなか上手くいかないです…( ̄^ ̄)豚骨ラーメンの次に、塩ラーメンが好きです。 (2020年9月19日 13時) (レス) id: e9391e3b89 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:hiro | 作成日時:2020年8月18日 11時