308.【3】 ページ8
［翔にぃside］
智「和ね、
これが喉に入ってるの。
だから、目を覚ましても
ただただ苦しいだけ…
可哀想じゃない？」
俺が用意した挿管具を見せて
潤に問い掛ける智にぃ。
智「起きてる時に会ってないもんね。
会わせてあげるから。
辛いけど、自分の目でしっかり見て
それから考えよう？」
潤は不安そうな顔のまま小さく頷いた。
昼過ぎまで待って、
俺らは和に会いにいった。
ベッドの横で和に優しく触れる潤。
その手がピクリと反応を示し出した。
俺はなるべく苦しい時間が減るように
薬をセットしておいて、
少し離れて潤を見守った。
潤「…かず？苦しいの？」
口元に伸ばされる和の手を握って
潤が問い掛ける。
ポロポロ泣き出して、小さく唸りながら
必死に「苦しいよ」って訴える和。
目はキツく閉じられたままで、
潤の声掛けにも反応しない…
「かず〜、苦しいね…すぐ薬入れてあげる。
だいじょうぶだよ。」
見ていられなくなった俺は、和に声を掛けた…
潤「…な、んで…」
潤は床にペタンと座り込んでしまった。
智にぃは、すぐに後ろから抱きしめてやる。
智「辛いよね。でもね、受け入れるしかない…
見てごらん？苦しいって言ってるでしょ？」
智にぃは潤を支えて立たせようとするけど
潤は目を瞑たまま首を振ってそれを拒む。
潤「…や、だ。みたく…ない、よ…」
智「そうだよ、潤。
可哀想で見てられないでしょ？
だから、翔がラクにしてくれるって
言ってるんだよ？」
潤は泣きながらコクコク頷いて
手を伸ばす。
智「翔が薬入れたら、すぐ眠るから
大丈夫だよ。ちょっと待ってて。」
智にぃが合図してくれて
和の手を握ってくれた。
それまで和に声を掛け続けていた雅紀は
今度は潤を抱きしめてやる。
「苦しいね…かず、薬入れたからね。
今日はね、みんなで来たよ〜。
泣かないで、安心して休みな」
しばらく顔を歪めていた和は静かに眠った。
和の足元に伏せて、泣き出した潤。
智「もう苦しくないって。大丈夫だよ。」
智にぃは、しゃっくり上げる潤の背中を
同じテンポで優しくトントンして
落ち着かせてやった。
「そろそろ出ようか…」
俺の言葉に、みんな無言で部屋を後にした。
智「潤。ごめんね、辛かったね。」
小さく首を振った潤。
潤「しょ、にぃ…和のこと、助けて…？」
目に涙をいっぱい溜めながらも
俺をしっかり見て呟いた。
「うん、任せて。」
俺は自分でもビックリするくらい、
しっかりした返事をしていた…
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作者名：空
| 作成日時：2013年1月16日 6時
