312.【7】イライラ ページ12
［潤side］
翔「あれ？
ボール飛んじゃった？笑」
和がドアに向かって
ボールを投げたタイミングで
ちょうど翔にぃが入ってきた。
雅「あ、ごめんね。俺が言いたいこと
分かってやれなかったから悪かったんだ…」
雅にぃは駆け寄っていってボールを
受けとった。
翔「いや、雅紀のせいじゃないだろ？
かずー？なに怒ってんの？」
和は翔にぃから目を逸らす。
気管切開から4日間が経ち、痛みもなくなり
トイレに行ったり、散歩に行けるようになって
それなりに生活は送れているのに
意思の疎通が上手くできなくて
イライラしっぱなしの和。
机の上には、翔にぃが用意してくれた
ホワイトボードと文字盤が置いてあるけど
和はそれを使いたがらない。
使ってくれれば、少しは和の言いたいこと
分かると思うんだけど…
翔「ほら、そんな怒らないの。」
それでも翔にぃは和の気持ちを尊重して、
無理矢理使わせるようなことはしない。
イライラした和に、ゆったりした気持ちで
接してやって、聴診を済ませた後
息抜きに散歩を提案した。
気管切開をしてから、
笑わなくなってしまった和。
心配する俺らに、翔にぃは「だってまだ
気管切開したばっかりだろ。
そんなもんだよ。」って笑っている。
沢山の患者と向き合っている翔にぃが
そういうなら大丈夫なんだろう。
散歩から帰ってきた和は
夜まで眠っていた。
翔「和？体拭いてもいい？」
小さく頷いた和を見て雅にぃがお湯を
用意してくれた。
智「気持ち良いね〜、かず。」
翔「明日の昼間、体調よかったら
髪の毛洗おうか。どうする？」
和はまた小さく頷く。
口パクで「あらう」ってやってくれるだけで
だいぶコミュニケーションの幅は
広がるんだけどね…
和はそれすら拒んでいる。
翔「じゃあ、12時くらいにシャワールーム
予約しておくね。」
それでも翔にぃは嬉しそうに声を掛けた。
途中でお湯を交換しに行ってくれる
雅にぃを目で追いかけてる和。
その目は確かに「ありがと…」って
伝えている。
雅「ん？かず〜、気持ちいいね。」
雅にぃは和の視線に気が付いて
優しく声を掛けた。
和のイライラの矛先がどうしても一番に
向いてしまうのは雅にぃで…
ここのところ、毎日のように和の
イライラを受け止めている。
でも雅にぃは愚痴や不満ひとつ言わずに
「辛いのは和だから」って
受け止めてくれている。
和もセーブできないだけで
ほんとうは分かっているんだもんね…
みんなも分かってるよ。笑
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作者名：空
| 作成日時：2013年1月16日 6時
