2998.【3】 ページ48
［藍沢先生side］
ヒックヒックと
忙しなく動く和也くんのお腹に手を当てて触診。
できればこれ以上、恐怖心は与えたくないから…
点滴の処置でパニックに陥ったけど、また少しずつ
落ち着いてきているから、やっぱり藤川はさすが。
だけどまだ、完全に落ち着いているワケでは
なくて…
「ここ、痛む？」
和「…」
「…ここは？」
和「…っ、んっ…んくっ…しま、い…」
「…」
質問をしても無視されるか「おしまい」って
言われるか。笑
胸、結構強く打ってると思うんだけど…
心配だから聴診器を取り出したら、恐怖心を
煽ったのか「やだ…」って言いながら泣き方が
激しくなってしまって…
和「…っ、や…、しな、い…や…、やだ…」
藤「大丈夫だよ、和也くん。したことあるでしょ？
恐くない、こわくない」
和「…っ、んくっ…やだ…しょ、にぃ…」
さっきも和也くんの口から「翔にぃ」って言葉が
出てきたな…と思って、聴診しながらもう一度、
首から下げられた医療カードに目を通す。
「お兄ちゃん、医者か…」
和「…っ、ん、んくっ…しょ、せん、せ…」
藤「へぇ〜、お医者さんか」
和「…っ、んくっ…しょ、せんせ…こわ…ない」
藤「そっか。じゃあ、早く翔先生に診てもらおうね」
和「…ん」
冴「連絡とりますか？」
「ん、頼む」
今のうちに連絡しておいてもらえれば、ヘリで
こっちの病院に搬送する頃に来てもらえるかも
しれない。
［藤川先生side］
「和也くん？ここに凭れてラクにしてていいからね」
和「…ん」
脱気の処置が必要になったから、和也くんが少しでも
安心できるように、体制を整えていく。
我慢していたみたいだけど、呼吸はかなり苦しく
なってきているみたい。
冴「和也くん、これ付けてようね」
和「…っ、んっ…」
冴島さんが付けてくれた酸素マスクから嫌がって顔を
背けるけど…
「大丈夫だからね〜」
和「ん…んん…」
後ろから抱きしめるように座り直した俺が腕ごと
抑制してしまう。
腹部に滅菌シートを被せて、それで冴島さんが
和也くんの視界を遮る。
藍「ここに空気溜まってるから、今から抜くからな」
和「…っ、や…んっ…」
藍沢の言葉に、また何かされる…と察した和也くんが
パニック気味になるけど…
藍沢は「麻酔の注射」などとは、敢えて声を掛けず
胸を消毒して、サッと麻酔の注射を始めた。
和「…っ、ん…や…、んくっ…」
「ちょっと痛いね〜…でも、もう終わるからね」
頑張れ…和也くん。
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作者名：空
| 作成日時：2018年9月6日 18時
