2961.【5】 ページ11
［翔にぃside］
颯が明日には
帰るって日。
颯もね、寂しさを感じていたんだと思う。
連日以上に朝から智にぃにベッタリだったから。
みんな、そんな颯の気持ちを分かっていて…朝から
そっと見守ってた。
もちろん智にぃも。
何度も「いつだって遊びにきていいからな」って
伝えてあげていたんだ。
和もヤキモチ妬きながらも、なんだかんだ颯を
可愛がっていたし。
でも、夕食を食べ終わった後…
颯「さーとし、これ一緒に飲もう！」
グラスいっぱいにオレンジジュースを入れて、
リビングのローテーブルの上に置いた颯。
自分用と智にぃ用の2つ。
問題はそのグラスだったんだ…
ディズニーランドで双子が俺らに買ってくれた5個
入りのグラス。
颯が自分用にと持ってきたのは、和が使っている
チップとデールのデザイン。
智にぃのはミッキーだから問題ないんだけど…
和「それ、俺のだから使わないで」
颯「…っ、あっ！」
和室に寝転がって潤とゲームをしていた和が
いち早くやってきてグラスを奪う。
さっき俺に「飲み物は駄目」ってストップを
かけられたことが重なってイライラしていたんだと
思う。
俺と雅紀はカウンターの椅子にいて…
「颯には俺のドナルド貸してあげるからね！」って
雅紀が代わりを持っていったけど…
颯「やだっ！これが好きなんだもん！」
こんな時に限って、颯の初めての我儘が飛び出した。
雅「貸してやれば？」
見兼ねた雅紀が声を掛けたけど、和はドナルドの
グラスを手から奪って、それを颯の前に…
和「…やだ！お前はこれ使え！」
颯「…っ、んっ…ん…」
泣き出した颯の目の前でチップとデールのグラスから
ジュースを移した和。
颯「…うわーん！」
「…かーず」
そりゃさ、目の前でやられりゃ、もっと泣きたく
なるだろ…って。
和「これ…俺のだもん…」
「…かず！」
空のグラスを手に取った和は自室へ。
もちろん俺はその後を追う。
そしたらすぐに智にぃも来てくれたんだ。
智にぃは、ベッドの上に不貞腐れて座っている和を
ギュッと抱きしめた。
『ごめんなぁ…かず』って。
妬きもちで寂しい思いをしていたことも、コソコソと
診察や服薬をしなけれならなかったことも。
ジュースをゴクゴク、アイスをパクパク目の前で
食べられていたことも。
…和にはものすごく負担がかかっていたこと、
智にぃはぜーんぶ分かっていたんだ。
さすがだなぁ…と思う。
ギュッと抱き合う2人を見て、そっとドアを閉めた。
END
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作者名：空
| 作成日時：2018年9月6日 18時
