268.【2】 ページ18
［雅にぃside］
智「かず、
だいじょうぶだよ。
ほら、翔だよ。」
俺が仕事から帰ると
リビングで智にぃに抱きしめられている和。
取れちゃうんじゃないかって
心配になるくらい首をブンブン振って
泣き叫んでる。
智「見てごらん、翔だよ？
お腹の音聴くだけだって。
ね？そんな泣かないの…」
翔「あ、雅紀。おかえり。
ごめん、俺じゃ無理そうだから、
聴診してもらっていい？」
翔にぃは和から少し離れて、
俺に声を掛けてきた。
智「かず。落ち着こう？
何にも怖いことしないし、
嫌がることもしないから。ね？」
根気強く智にぃが説得したら
やっと少しだけ落ち着いてきた和。
智「雅紀に音だけ聴いてもらおうね。
体調悪くなったら辛くなっちゃうから。」
「かず〜、平気だよ。
すぐ終わるからね〜。」
俺が聴診器を手にして前にしゃがんだら
和は目に涙をいっぱい溜めて
後退りしようとするけど、
抱きしめられてるから動けない。
智「だいじょうぶだよ。怖くないよ…」
智にぃが、声を掛け続けても
和は怖がって手をバタバタさせて
聴診器から逃げようと必死だ…
智「かず、だいじょうぶだから。
嫌々言ってたら終わらないよ？
ここには、お医者さんいないでしょ？」
智にぃは手を押さえながら
服も捲ってくれた。
無理矢理で可哀想だけど、
和のお腹にそっと聴診器をあてていく。
心拍数が、かなり速い…
聴診されるだけなのに、
それほど怖いってことなんだな。
俺は改めて和の抱えるものの
大きさを知った気がした。
「おしまいね〜。」
俺が頭を撫でても少しも笑わない和を
智にぃは自分の方に向けて
優しく抱きしめて落ち着かせた。
翔「和、どう？」
キッチンから様子を伺っていた翔にぃが
心配そうに聞いてくる。
「うん、かなり心拍数速いけど問題ないよ。
よかったね。」
俺が笑ったら翔にぃも笑ってくれた。
診察さえなければ、
和は翔にぃのことも怖がらないし、
生活もいつも通り送れる。
だけど、一日に何度か
診察しなきゃいけない和にとって
この状況が続くのは厳しい…
和「…しない。こないで。やらない…」
智「おいで、和。すぐ終わるから。」
和「…やだ。あっちいって…」
智にぃの手から逃れようと
暴れて逃げまわる和。
何度見ても可哀想で
何とかしてやりたくなる…
智「すぐだから。ごめんね、和。
我慢してね。」
智にぃに捕まった和は泣き叫び始める。
さっきまで、あんなに楽しく
笑っていたのに…
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作者名：空
| 作成日時：2012年12月30日 18時
