2896.【2】 ページ46
［智にぃside］
当直の翔の代わりに
「体調チェックしてくるね〜」って、リビングを
出ていった雅紀が、血相を変えて階段を駆け降りて
きた。
「どうしよう…和が起きない！！」って。
雅紀の手には薬のゴミが握られてる…
とりあえず救急車呼んで、翔に電話して、部屋の中を
捜索して…ってやることいっぱい。
潤「…かず」
「大丈夫…信じて待ってようね…」
あっという間に病院。
そして処置室…
「…なにがあったんだろうね…」
雅「…ん、なんでこんなことに…」
潤「…っ、んっ…んくっ…」
和は意識をなくしていたから、真相は不明。
ただ、握られていた睡眠導入剤のシートは2枚全て
中身がなかった。
翔が「全部飲んだって考えるのが妥当だ」って。
雅「眠れなかったのかな…」
「そうかもしれないね…きっと一人で悩んで
たんだね…」
ヒックヒックとしゃっくり上げて泣く潤を、腕の中に
おさめる。
今は、掛けてやれる言葉が見つからない…
「…っ、翔…」
思っていたよりずっと早く処置室のドアが開いて…
目を赤くした翔が、先生に支えられながら出てきた。
『…ごめん、何も出来ることがない…』
翔が発した言葉の意味を理解するのに時間が
かかる…
先に反応したのは腕の中の潤で。
潤「…っ、んくっ…かず、は…？…っ、どこ…？」
先「これからICUに運ぶね」
取り乱す潤と、何も反応できない俺ら。
その中で先生はいつもみたいに冷静でいてくれて
ICUに移動した後も説明をしてくれた。
「薬を飲んでから時間が経ち過ぎているから、
和くんの体に吸収されてしまっているんだ…」と。
このまま昏睡状態が続くかもしれない…
翔「…飲み合わせも、悪く、て…」
「…そっか」
潤「…っ、んくっ…かず…」
俺の腕から抜け出した潤は、ベッドに眠る和の足に
縋って泣いている。
しばらく離れないだろうな…
「着替えとか用意してくる…」
先「翔くんも一旦、智くんと一緒に帰って
少し休んでおいで」
「そうだね、一緒に帰ろうか…」
翔「…ん」
雅紀と潤には病室に残ってもらって、翔の腕を
引いてICUを出る。
翔「…っ、んっ…」
「…翔」
ICUを出て角を曲がった途端、膝からガクン…と
崩れ落ちるように、廊下に座り込んだ翔。
雅紀と潤の前では我慢していたんだよね。
何も出来なくて悔しいのはみんな同じ。
でも翔は、医者として何もできない…って悔しさも
同時に抱えてる。
苦しいね…
「…ん、いいよ…泣きたい時は泣け…」
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作者名：空
| 作成日時：2018年4月10日 17時
