2792.【4】 ページ42
［雅にぃside］
ゆっくりと目を開けた和。
だけど、その目は俺らに向けられることなく
ボーッと天井を見つめたまま。
いつもだったらポロポロと涙を零しながら俺らを
求めて、発作で不安だった心を埋めようと
するのに。
そのうち微かに口を動かすようになったけど…
和「…なんで、俺…消えて、ない、の…」
智翔雅潤「…」
和「…お願い、したのに…」
返す言葉なんて何も見つからなくて…
普段の和とあまりにかけ離れているから…
戸惑う俺らを見て、先生が「もう少し休もう」って
和に声を掛けてくれた。
和「おれ…もう全部やだ」
先「…ん」
和「みんなに、迷惑、掛けるのも…」
先「…ん」
和「発作も…痙攣も苦し、い…」
何も応えられない俺らに代わって、先生が和の
頭を撫でながら「…ん」って頷いてくれる。
和の言葉は尚も続いて「治療も、もうしたくない」
って。
先「そうだね…苦しいね…」
和「…ん」
先生の言葉に小さく頷いた和は、そのまましばらく
天井を見つめて、それから目を閉じて眠った…
1時間くらいして目覚めてからも、和の思いは
変わらず「もう何もかも嫌だ」「治療も続けたく
ない」って訴えて。
覇気のない目で天井を見つめたまま…
俺ら4人は何もしてやることが出来なかった。
［翔にぃside］
和「もう…いい、の。何も…で…」
「和…」
点滴から薬を追加しようとしたり、診察をしたり。
その度に和は「もういいの」「もう治療しないで」
って、そんな言葉を呟いて、ひたすら拒否。
だけど、いつもみたいに俺らに訴えるわけでは
なくて、天井を見つめて呟くばかりで…
「少し眠ろうな…苦しくなるから」
和「もう…いいの、に…」
呟きながらポロポロ涙を零す和の頭をそっと撫でて
点滴の側管から鎮静剤を投与する。
「寝たね…、ちょっといい？」
智「…ん」
体をさすってあげていた智にぃに声を掛けて
談話室に移動。
その間、和のことは看護師さんが見ていてくれる。
もう脱走させるわけにはいかないから、24時間体制で
誰かが付き添ってる。
「このままじゃ、進展しないと思うから…」
智「…ん、きちんと向き合おう…」
「和の気持ち…分かるから…」
智「…そうだね」
潰れそうになっている和の心。
いつだって苦しかったはずなんだ…
でも、頑張るしかなくて。
生きるためには恐怖や苦しさと闘わないと
いけなくて。
和はいつだって精一杯やってきた。
そう思うと…
「…っ、んっ…ん…」
涙が溢れる…
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作者名：空
| 作成日時：2017年11月17日 22時
