2695.【4】 ページ45
［翔にぃside］
智にぃと話を終えて
ベッドに寝転んでから考えてみる。
『翔が思いを伝えていけば、上司もきっと
分かってくれる』
『患者さんにも、これからも誠意を持って
対応すれば大丈夫』
『翔くんには、今の状況に負けずに翔くんらしさを
貫いて欲しい』
智にぃと先輩からもらった言葉。
勇気を出さなきゃいけないんだって
思った。
相談にのってくれる先輩と兄と、心配して
くれる兄弟がいるんだから、強くならなくちゃ…
そう思ったけど、なかなか先には踏み出せず
モヤモヤした日々を過ごしていた。
情けないな…と思いながら、ね。
「先生、すみません。お時間いいですか？」
上「あぁ、いいよ。一緒に昼飯にしよう」
この一言、これを言うために何度頭の中で
リピートして、何度…医局を行ったり来たり
したことか。笑
上「あの患者さんのこと？」
「いや…それだけではなくて。自分が大事に
してることを、きちんと伝えておきたいなと
思いまして」
上「いいよ。話して聞かせて」
ご飯を食べながらだったけど、先生はきいて
くれた。
だから、和のことや俺の思いも含めて全て伝える
ことが出来て…
上「真面目だなぁ、翔くんは…」
「…えっ？」
先生の第一声がそれだったから、正直戸惑った
けど…
上「俺となんて数ヶ月の付き合いなんだからさ、
適当に折り合いつけて付き合えばいいじゃん。
みんなそうしてる。その方がラクだろ？」
「そんなことないです」
上「短い間の付き合いだとしても、ちゃんと
向き合いたいなんて、今時珍しいよ」
先生の表情が少し柔らかくなったのが分かる。
上「どんなに短くても、例え一瞬の付き合いでも
一人の人間として、きちんと接する。なかなか
出来ることじゃない」
「…はい」
上「でも、翔先生はそうやって、この病院で
上司とも後輩とも患者とも、沢山のスタッフとも
接してきたんだもんな」
「…」
上「一つひとつ、一人ひとりと向き合いながら
過ごしてきたのに…
ぶち壊して悪かったよ、ごめん…」
「…っ、そんな。先生に謝られるようなことは
何もありません」
先生は「はは！」って笑って「みんなが『翔先生』
『翔くん』『翔さん』って慕う姿を見てきて、
少しずつ感じ始めてるんだ。翔先生の存在の
大事さと大きさ」って。
「数ヶ月だけど、よろしく。頼りにしてるよ」
って。
先生にきちんと自分のことを話すことが出来た。
みんなのお陰だ…
一歩進めたことが、今はとても嬉しい。
END
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作者名：空
| 作成日時：2017年9月3日 16時
