2673.【3】 ページ23
［智にぃside］
今回、頑張って治療して
完治までたどり着ければ、自信もつくはず。
そう思って、やや無理矢理に病院に連れて
きたんだけど。
「思ってたより恐怖心大きいかもね…」
雅「だね…」
診察の椅子に座った潤は、緊張で体が震える程。
先生の手が耳に触れたら「ん…」って声を
小さく漏らしながら、阻止しようと手を出して
しまって。
翔「ごめん、智にぃ。いい？」
「ん。潤？手出すと先生見れないから。ね？
繋いでようね」
椅子の傍で潤の手を握る。
先生の配慮で看護師さんもいないから。
不安そうに揺れる瞳…
「大丈夫だよ」
手を握り直したら、潤もギュッと握ってきて
くれた。
先「潤くん？しっかり見たいから、少しだけ
頑張れる？痛いことはしないから」
潤「…っ…」
頷いたり声を出したりしたいんだろうけど、
もう固まっちゃってるから…
その様子を見て翔が判断して「大丈夫だよな？」
って声を掛けて、それから先生に合図した。
先「ちょっとビックリするかもしれないけど
痛いことはしないから。約束ね」
潤「…っ…」
「よかったね、潤…」
翔が少し力を入れて頭を固定したのが分かる。
先「大丈夫だからね〜…」
潤「…っ、んっ…」
器具が入った途端にビクッとなる体。
すでにこんなに恐がっていて可哀想なのに…
診断の結果は中耳炎で、しかも膿が溜まって
いるから切開しないと駄目だって。
先生は潤に隠すことなく「前にやった治療も
多分同じだったと思うんだ」って説明してくれた。
潤は「頑張りたい」「でも恐い」って2つの
感情に揺れていて。
考えたり、思い出したりする程に恐怖の気持ちは
大きくなってしまうから…
潤「…っ…、…わい…」
翔「大丈夫…」
次第に目に涙もいっぱい溜まってしまって。
なかなか決断出来ずにいる。
先「麻酔だけ先にしておこうか。脱脂綿入れる
だけだから、5分くらい」
翔「そうですね。お願いしようか。な？」
潤「…っ、ん、んーん、んーん…」
雅「大丈夫。だいじょうぶ…」
必死になって首を振る潤を、雅紀が背中をさすって
宥めて。
「繋いでよう？恐くないから…」
耳に伸びそうになる手を捕まえて握る。
潤「…っ、…んっ…、んくっ…」
ポロポロ泣き出してしまったけど、体を動かして
抵抗するまではしてこないから。
理性は保てているし大丈夫だろうと…
翔と雅紀とも合図し合う。
小さい頃の恐怖体験を、新しい記憶で塗り替えて
くれたら…と思う。
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作者名：空
| 作成日時：2017年9月3日 16時
