2672.【2】 ページ22
［潤side］
ここ最近、ずっと耳が
痛くって…
我慢しきれなくなってきて、ついに翔にぃに
バレた。
翔「痛いんだろ？」
「…」
黙っていて逃げれるとは思わない。
でも何て返したらいいか分からなくて…
怒られるかな…と思ったけど。
翔「じゅん…恐いか…？」
「えっ…」
優しい声がしたと思ったら、膝に触れた大きくて
温かい手。
相談した方がいい…そう思えた。
そこからはトントンと話が進んだ。
ほんとは翔にぃに診てもらいたかったけど
専門外だから無理で。
その代わり、和が何度かお世話になっている
耳鼻科の先生を紹介してくれるって言ってくれた。
だけどやっぱり、朝になっていざ耳鼻科に
行くってなったら恐くって。
「いきたくない…」
「待ってるな」って言葉を残して、先に家を
出た翔にぃには「いくね」って伝えたんだけど…
和を学校に送り出した後に、ぐだぐだ。
泣きはしないけど、ソファーから立ち上がらずに
「いきたくない…」って連呼してしまう。
雅「半休もらったから、俺も一緒に行ってあげる。
ね？頑張ろう？」
智「よかったね、潤。心強いね」
「…ん」
兄貴たちは、俺がこんなにぐだぐだしたって
怒ったりしない。
病院に行くのを嫌がっているのを『我儘』だと
思っていないからなんだと思う。
理解してもらえてるんだから…
俺も頑張らなきゃね。
そう思って頑張って病院まで来たけれど、
診察室に入ったらもう駄目。
あの椅子…見るだけで思い出す。
看護師さんに押さえ付けられて…
こんなに痛いことってある？ってくらい
激痛の治療だった。
子どもの頃の記憶だから、今同じ治療をしたら
もしかしたら我慢できる程度の痛みなのかも
しれない。
でも、そんな風に冷静にはなれないよ…
先生は優しく笑って挨拶してくれた後「翔先生から
きちんとお話聞いたから大丈夫だよ」って。
「…るだ、け？」
先「ん、見るだけね。座れる？」
「…はい」
なかなか足が進まないけど、智にぃが優しく背中を
押してくれて、診察の椅子に座れた。
軽く診察された後、いよいよ痛い右耳。
翔にぃに頭を支えられながら先生に右側を
向ける。
翔「大丈夫、見てもらうだけ。な？」
「…ん」
もう恐さがピークに達して声が震える程で…
智にぃと雅にぃが「大丈夫だよ」って
優しく声を掛けてくれる。
先「見るだけね」
「…っ、んっ…」
翔「大丈夫、だいじょうぶ…」
右耳に先生の手が触れるだけで、ビクッとして
頭を動かしてしまう。
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作者名：空
| 作成日時：2017年9月3日 16時
