5人で生きてゆく…part53 (ページ24)

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2624.【翔にぃと研修医】ページ24

［翔にぃside］

研「分かりました。
次からはそうします」

なんだろう…この感じ。

俺が言ったことに納得していないのに『とりあえず
素直に返事しておこう』感がハンパない。笑

目も合わせないし、話に被せるように「はい、
はい、はい」って返事だけはしっかりしてきて。

同「大変だろ？あいつ…笑。先月まで俺の科の
後輩が指導医でさ。散々だったみたいだから」

「…ん、まぁね…笑」

同期の奴にも心配される始末。

確かに、院内で研修を重ねるにつれて、
評価は悪くなる一方の研修医だった。

こっちに回ってきた時も、指導医になりそうな
医師達の大半が『◯◯先生は…』って渋って
いたくらいだから。

押し付け合いになってしまうのが嫌で「俺が
指導医になります」って引き受けたんだ。

いつも迷惑掛けているからね…こんな時くらい。

それに悪い噂ばかりを耳にするけど、良いところも
あるはずだ…なんて思いもあって。

だけどちょっと軽く考えていたみたい。笑

俺が思っていたより、そして噂で聞いていたより
手強い研修医だった。

なんだろうな…素直さがない。

そして…フレッシュさもない。笑

やけに頭が良くて、仕事はきちっとやる。

でも…人間味がない。笑

要するに先輩に可愛がられにくいタイプ。

それだけでも、だいぶ損をしているんだと思う。

そのことを自分で分かっていて、不貞腐れて
いるのか…

それとも敢えて、そういう態度を貫いているのか…

はたまた、そういう人間でそういう性格なのか…

色々と分析したよね。笑

不器用でもいいと思うんだ、医者はサービス業
じゃないし。

でも、人間味は必要。

患者の気持ち、患者家族の気持ち、患者を
取り巻く沢山の人達の気持ち。

色んな気持ちを考えて行動、言動をしなくちゃ
いけない職業ではあるから。

この病院は特にそう。

患者のメンタルのケアを最優先にしているところが
特徴だからね。

「…そういうこと、分かってる？」

研「分かってるつもりです」

「いや…分かっていないんだと思う」

研修医の性格も考慮しつつ、指導を重ねてきた。

だけど、良い関係を築けているとは到底
言えなくて。

そんな時に起こってしまったトラブル。

検査に来ていた患者は和と同じ『突端恐怖症』

それなのにトレーにのせた注射器を剥き出しで
差し出そうとして。

注意を受けて発した言葉が『分かりました、
すみません』で。

「患者の気持ちを考えないといけない」

そう言ったら「そうですか」って。