2006.【6】 ページ6
［先輩side］
翔くんの嗚咽は止まらない。
それだけ、自分を追い込んで思いつめて
苦しい思いをしたんだろう…
「もう一回、和くんのこと診てくるな？
検査は、延期にしてもいいんだろ？」
翔「…っ、んっ、…んくっ…」
嗚咽と共に、何度も頷く翔くん。
和くんの熱は、精神的なもの。
だからこの状況で無理に検査を進める必要はない。
「一人になって、少し落ち着きな…
和くんのことは、責任もって診てくるから。な？」
翔「…っん、んくっ…」
頷いた翔くんの手に、冷たいタオルを握らせて
医局を出る。
コンコンコン…
通い慣れた病室。
ベッドに寝かされた和くんはポロポロ泣きながら
「しょ、にぃ…」って手を伸ばしてる。
智「かーず…？先生。」
智くんは、そんな和くんの手を握って「何度も
きてもらってすみません」って優しく笑った。
高熱で頭痛が酷くて、目を開けられない状態の
和くん。
求めているのは翔くんのこと…
「かずくん…？後で来てくれるからね。
ちょっとだけ、聴診器当てさせてな…？」
和「…っ、ん、…や」
「大丈夫…ちょっとだけ。」
嫌がって体を捩るけど、足が少し動く程度。
体がキツくてそんなに抵抗はできないんだ。
和「…っ、ん。や…、…ょ、にぃ…」
「あとで、来てもらおうね…？」
和「…っ、ん…、…ょ、せんせ、がいい…」
「ん、呼んでこような…」
泣きながら翔くんを求めて、聴診器を払おうとする
小さな手。
智くんが「かず…？手は出さない約束だよ？」って
何度も握って抑えるけど…
和「…っ、…んっ、…しょ、せんせ…」
不安な心は、どうしてあげることもできなくて
もどかしい…
「喉乾いたんじゃない？飲む？」
和「…んっ、…んくっ…」
頷いたのを確認して頭を撫でる。
伝わってくるのは、かなりの熱…
「飲ませなながら、そっち向けてくれる？」
智「はい。かず、良かったね。美味しそうだね」
パックのジュースを手渡して、気を引いてもらう。
その隙に体温を計りたくて…
「かずくん？一瞬、我慢な」
耳元で小さく声を掛けて、そのまま体温計を
差し込む。
和「…っんっ…」
智「だいじょーぶ。おしまい…」
さすが、智くん。
嫌がって反り返りそうになった頭を
しっかりと支えてくれた。
表示された体温は39.6℃…
サッと智くんに見せて電源を切る。
「…検査は延期にしよう」
智「…はい」
翔くんに報告したいから一度医局に戻る。
もちろん翔くんの第一声は「和は？」だった。笑
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作者名：空
| 作成日時：2015年10月17日 13時
