2012.【3】 ページ12
［翔にぃside］
鎮静剤を用意していたら
和の部屋から聴こえたコール音。
智にぃとほぼ同時に部屋に駆け込んだ。
和「…っ、…っん、…るぐる、する…っ、んっ…」
智「大丈夫、だいじょーぶ。ほら、いるから…」
起きた直後に酷い目眩に襲われたみたいで
若干パニック状態。
ポロポロ泣きながら伸ばされる手を
智にぃがそっと握って声を掛けてくれてる。
その隙に聴診器を当てさせてもらうけど
心音は大丈夫そう。
「目眩は時期に落ち着くと思う。ホットタオル
持ってくるね。雅紀、大丈夫そう？」
智「ん、お願い。雅紀ね…翔のこと追おうと
してた…泣いてたけど、置いてきちゃった」
「ん、分かった。ちょっとだけ覗いてくるね…」
雅紀の方も心配。
あのまま泣き続ければ呼吸が苦しくなっても
おかしくない状況だったから…
「…っ！」
部屋を覗いてア然…
ベッドは空っぽで、フローリングに落ちた携帯。
急いで玄関に向かったけど、すでに靴はなくて…
「まさき！！」
表に出てみたけど、見える範囲にその姿はない…
潤「どしたの…？翔にぃ？」
振り向いたら、潤が心配そうに玄関の外に
立っていた。
「ごめん…起こしたな…」
潤「んーん、そうじゃなくて。
なんか…あったの？」
ん…色々あった。
いったいどこから説明したら、いいんだろう…
［雅にぃside］
智にぃと翔にぃが優しくしてくれると
縋ってしまう自分。
こんな弱い自分は大嫌いだ…
仕事にも行きたくないし、誰にも甘えたくない。
迷惑ばっかり掛けるなら、いなくなった方がいい…
ジャケットを掴んで、スニーカーを引っかけて
外に出る。
明け方の空気は冷んやりして気持ちよくって…
どこに、いこっかな。
フラフラと歩く。
近くの公園を通り過ぎて土手に出たら
そこを真っ直ぐ歩く…
どこまで行っても真っ直ぐな道。
出口がなくって、だんだんと距離の感覚が
なくなってきた。
ゴールがなくって、答えが見つからない…
きっと俺もこんな感じ。
いつまでも答えなんて見つからなくて
こうやって彷徨うんだろうな…って。
そう思ったら涙がポロポロ零れてきちゃった…
河原まで降りていって目立たないところに
しゃがみ込む。
俯いたら、もっと止まらなくなった涙…
『もっと責任感がある人を担当にしてくれ』
先方から言われた言葉が、頭の中を永遠と
リピートする。
ほんとだよね…
こんなに弱くて責任感のない人間。
いらないじゃん…
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作者名：空
| 作成日時：2015年10月17日 13時
