182.【3】 ページ32
［翔にぃside］
連絡を受けて
すぐに処置の
準備にとりかかった。
結局、今回も発作から
守ってやれなかった…
救急車から降ろされた和は
限界の体力の中、必死で苦しさを訴える。
もう俺のことも分かっていないかも…
看「和くん、
お兄ちゃんがラクにしてくれるから、
大丈夫よ…」
ずっと和の担当をしてくれている看護師が
本当に優しく声を掛けてくれている。
早くラクにしてやりたい…
苦しくてどうしようもなくて、
手足をバタバタさせている和。
酸素マスクを外そうと伸びてきた手を
智にぃに握ってもらい、
点滴が繋がっている手を、安全の為
ベッドに固定する。
この状況で体の自由を奪われるのは、
相当な苦痛だろう…
俺は鎮静剤が早く効いてくれるように
ひたすら祈りながら、治療に専念した。
その間も、力の限りにバタバタ暴れて
苦しがる和。
治療に支障がないように押さえられる姿が
可哀想でやりきれない…
「かず？ごめんね。ラクになるからね…」
必死で声を掛けて、自分を落ち着かせる。
医「心拍もかなり弱いし、
もう意識レベルも下がってるよ？
翔くん、挿管してやろう？」
俺が主治医になるまで、
ずっと診てくれてた先輩に声を掛けられる…
「挿管…しなきゃダメですか？」
思わず聞き返してしまった。
医「してあげた方が和くん自身も楽になるし、
安心だろ？
弟じゃなかったら迷わず挿管するだろ？」
確かにそうかもしれない…
挿管されて、意識がないまま眠る和を見るのが
嫌なだけなんだ…
和が楽になるなら、やってやろう…
「挿管、します…
智にぃ、ごめんね？外で待ってて。」
智にぃは「任せたよ。」と笑って、
俺の肩を叩いて出ていった。
医「しっかりして？サポートするから。
やれる？」
こんな時、普通だったらきっと
先輩に怒鳴られるんだろう。
俺は明らかに家族だから、治療に悩んでいた…
主治医になりたいって希望した時も、
先輩には止められたんだ。
苦しむのはお前だからって…
でも俺はこの道を選んだ。だから逃げない。
「大丈夫です。
ちゃんとやれます。」
俺はしっかり頷いて、薬が効いて
完全に意識を手放して横たわる和を見つめた。
涙の跡が残る顔を、
看護師さんが拭いてくれた。
看「和くん？お兄ちゃんが
ラクにしてくれるって。よかったね。」
「挿管します」
俺は覚悟を決めた…
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作者名：空
| 作成日時：2012年11月25日 13時
