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［翔にぃside］
夕方のバイタルチェックを
終えて先輩にメールを送る。
先「ありがとな。これから戻ります」
すぐに返信がきて安心してた…
だけど、その直後に担当看護師から呼び出しが
かかる…
看「翔先生、ののはちゃん、お願いします！」
ICUに鳴り響く電子音と、胸を苦しそうに
上下させるののちゃん…
「すぐラクにしてあげるからね…」
指示を出している間にも止まりそうな心臓…
聴診器を当てながら「がんばれ」って
何度も叫ぶけど。
『ピー』
ICUに響いたのは、ののちゃんの心臓が
停止したことを知らせる音…
看「ののちゃん、がんばれ〜」
沢山のスタッフが声を掛けて、ののちゃんを
励ます。
「ののちゃん、がんばれ。」
「学校、行きたいんだろ？」
「がんばれ、がんばれ」
こんなに頑張ってる幼い子に「がんばれ」
なんて言いたくないけど…
でも今は、ののちゃんに頑張ってもらうしか
方法がない。
心臓マッサージを続けながら心臓が動き出して
くれる事を、ひたすら願う。
俺が力を入れる度に、小さな胸が押しつぶされて
何とも言えない気持ちになる…
だけど、頭の中に浮かんでくるのは
恐がって泣いていたり、震えてるののちゃんじゃ
なくて。
先輩に抱っこされて「おさんぽなの〜」って
笑ってたり、「チックン泣いちゃったぁ〜」
って恥ずかしそうに報告してくる姿…
色んなことを乗り越えて、それでも尚
乗り越えないと生きていけない。
「ののちゃん？先生に会うんだろ…？」
「もうすぐママもきてくれるからな。」
額から汗が流れてくるのが分かる…
手にポタポタと落ちてくるのは
汗なのか、涙なのか…
「ののちゃん…」
諦めたくない。
先輩は俺に「任せる」って言ってくれたんだ…
笑った顔が見たいにきまってる。
「ののちゃん…？笑った顔、見せて…？」
ICUには張り詰めた空気が流れる…
心臓マッサージで動いている心臓。
強めの薬を入れてもらっての処置が続く。
数分後…
ICUに響いたのは、ののちゃんの心臓が再び
自分で動き出した音。
「がんばったな…」
「…ありがとう」
容態が安定するのを待って、俺はICUを出た。
バシャバシャッと顔を洗って
医局のソファーに身を委ねる…
担当看護師が気を遣って「ののはちゃんの
お母様見えましたよ」って連絡を
くれたけど。
もうすぐ戻ってくる先輩に頼むことにした。
情けないけど…
ガタガタと震える手のままで
会う勇気はなかったんだ…
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作者名：空
| 作成日時：2013年11月16日 0時
