1035.【35】副作用 ページ35
［翔にぃside］
「おっけ〜。
最後、あーん？」
和「…だから、それやめろって！」
「あ、ごめん。つい…笑」
外来で子どもを診察した後だと、ついつい
喉を診るのに「あーん？」って言ってしまう。
最近、和に「やめろ！」って怒られたのに。笑
和はプクッと膨れて「子どもじゃねーし」って
拗ねてる。
そういうとこが子どもなんだって。笑
そう思うけどさ、言えないよね。
「はい、口開けて？」
和「もう…あー…」
ペンライトで覗くと口内炎がポツポツ。
ここのとこ増え続けてるんだよな…
薬の副作用で間違えないし、今はあんまり
口の中を気にしてないみたいだから
指摘するのやめた。
少なからず副作用が出るのは
仕方ないし、和も分かってくれてるからね。
でも、さらに数日経つとそうも
言ってられなくなってきた。
和「…たくて、無理…」
「ちょっとでいいよ？あーって。」
和「…んーん」
診察で口を開けるのすら拒否したくなる程
増えてしまった口内炎。
口の中全体が腫れて、痛々しい…
こんなんじゃ当然、ご飯も食べてはくれなくて…
いや、食べたくても食べられないんだよね。
和「…っち、やって…」
フルフル首を振って何度もトレーを
押し返してくる。
智「じゃあ、こっちにしよう。
はい、あーん？」
和「…あー」
智にぃが小さく小さくちぎったメロンパンを
口に運ぶ。
汁物とか刺激の強い物は痛むからね。
渋々だけど口を開けて何口か食べてくれて。
和「もーいい…」
「これ、出す…」って最後の一口で食べた分を
ティッシュにペッと吐き出した。
出血してるのか、パンが赤く染まってて…
これじゃあ、美味しくなかっただろうなって
思ったら堪らなくて、頭をそっと撫でた。
和「…くなって、る？」
「ん？」
喋るのも辛そうに、少し間を空けて
「よくなってる？」って。
「良くなってるよ。今度、画像見せてあげるな。
小さくなってるから安心して」
和「…うん」
こんなことでしか慰めてやれないから。
でも頑張った分は和に戻ってくる。
今すぐには無理だとしても必ず。
だから「頑張れ」ってしか言えないし
厳しくしてしまう自分がいて。
「約束だろ？駄目！」
和「…ん〜、や、だ…」
「だーめ。」
口内の痛みから、薬を嫌がって左右に
激しく振る顔を抑えつける。
「ご飯は残してもいいけど、薬は飲む」って
約束を理由に厳しくする。
妥協したらキリがない。
可哀想だと思ったら、そこ止まり。
これで、いいのかな…
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作者名：空
| 作成日時：2013年11月10日 23時
