895.【9】突発性難聴 ページ45
［翔にぃside］
試すようなことは
したくないから
ストレートに聞くことにした。
救急の待合室で潤の目を捉える。
「じゅん？左の耳、聴こえてない？」
潤「…」
智「正直に言ってごらん？大丈夫だから。」
不安そうに瞳を揺らしてた潤は
「…わかんない」って涙目だ。
「そっか。ごめんな？ちょっといい？」
そっと右耳に手を当てて音を遮断する。
ビクッとして手を離させようとするけど
智にぃが「だいじょーぶ。」って
優しく背中をさすったら大人しくなった。
頭の上で静かに「どう？聴こえる？」って
呼び掛けてみるけど反応がない。
智にぃも左側から呼び掛けてくれたけど
やっぱり反応しない。
俺らは翌日、潤を耳鼻科に連れて行った。
結果は「突発性難聴」
智にぃに潤を連れ出してもらって
先生と話をする。
一番の原因はストレスだろうと…
耳「思い当たることありますか？」
そう聞かれて大きく頷く。
たぶん1週間以上、潤は辛い思いをして
一人で全部抱え込んでいたから…
そりゃ、体のどこかに不調が出ても全く
不思議な状況じゃない。
俺はカウンセリングのお願いをしてから
2人のいる屋上へと向かう。
智「あ、ほら。あそこにもいるよ？」
潤「ほんとだっ！おいで〜」
芝生に飛んでくる小さな鳥を
お菓子を投げながら呼び寄せてる智にぃと潤。
潤は俺に気が付かないくらい夢中になって
鳥を目で追ってる。
潤「ふふっ…食べてる。…！あ、翔にぃ！」
俺に気が付けばニコニコして手を振って
嬉しそうに笑う。
「鳥、可愛いね」
潤「うんっ。見て？和に写真送った。」
見せられた携帯には手が届きそうなくらい
小鳥を近くに呼び寄せてる智にぃが
笑顔で写っていて。
こんな時でもさ、やっぱり潤は「かず」って。
その優しさと、自分以外の人をこんなにも
大切にできる潤の心が誇らしい。
それを、もっとしっかり伝えてやらなきゃって
思う。
もう「自分が大嫌い」「悔しい」なんて
思わせない為にもね…
潤「和の先生と同じでしょ？」
カウンセリングのことを話したら
ニコニコしながら質問を投げ掛けてくる潤。
だけど…
潤「一緒がいい。いて…？」
カウンセラーと1対1の方がいいかなって
思ったけど、不安がって俺らの服を
離さないから一緒にいることにした。
カウンセラーは学校のこと、身近なことから
話を進めていって潤の緊張を解してくれる。
両側に俺らを座らせて、服をギュッと
掴んでいた潤の手から自然と力が
抜けていった…
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作者名：空
| 作成日時：2013年9月6日 7時
