871.【嚥下恐怖症】 ページ21
［智にぃside］
翔「また
むせちゃったね…」
和は数日前から、食事中によくむせる。
翔「ゆっくり呼吸してな〜」
「だいじょうぶだよ〜」
背中をさすってやって、落ち着くまで待つけど
大抵、そこから食事を摂りたがらなくなって
部屋に戻りたがる。
翔「もうちょっと頑張ってみたら？」
和「んーん…いい」
翔「今日はまだ、ほとんど食べてないだろ？」
和「んー、…なか、空いてない…」
翔に差し出されたお皿を押し返して
椅子から逃げようとする和。
その腕を掴んで「まだ駄目」って
譲らない翔。
結局、翔が付きっ切りで何とか少し
食べさせたけど…
和の機嫌は最悪。
少しも俺らと話そうとしない。
翔「かず？」
和「…」
翔「飲み込み難かったり、喉に違和感ある？」
和「…」
翔「むせちゃうから、食べるの嫌なんだろ？」
和「…」
翔「…こっち見て？」
ずっと俯いたまま無言の和の顔を
翔が少し強引に上げさせるけど、
キッと睨んだまま動かない和。
手を離せば、すぐに部屋に戻ってしまう…
雅「どうしたんだろ…」
肩を落として心配する雅紀。
翔は「こんなに頻繁にむせるのは
やっぱり何か原因があるからだと思う」って
すぐにパソコンで調べ始めた。
［和side］
また部屋に逃げてきちゃった…
にぃ達に相談しなきゃって思うんだけど、
伝えられなくて。
上手く飲み込めなくなった原因は
何となく分かってるんだ…
少し前に、夜中に嘔吐しちゃって
ほんの少量なんだけど寝てるときで。
「吐く」って思った時にはもう遅くて
仰向けのままだったから喉に詰まった。
息が出来なくて苦しくて怖くて…
どうしよう…って思ってもがいたら
運良く、スッとラクになって
そのまま寝ちゃったんだけど…
「もしあのまま詰まってたら…」って
思うと、怖くて夜もゆっくり寝られないし
ご飯を飲み込む時に警戒しちゃう。
だから、むせ込んじゃうんだと思うけど
なかなか改善できなくて…
だからといって、にぃ達に相談もできない。
また入院になったら嫌だし、検査も治療も
恐いから。
そんなこと考えながら、逃げてばっかりの
自分は嫌だけど、他に方法が思いつかない。
結局、今日も布団にくるまって心配してくれる
にぃ達から逃げる。
できることなら、何もかもから逃げたくて
全部なかったことにしたくて…
目をギュッと瞑る。
いつの間にか、俺の背中には優しい手が
そっと触れていた…
智「かず？」
そして、優しい声がする…
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作者名：空
| 作成日時：2013年9月6日 7時
