31.【12】厳しい翔にぃ ページ31
［雅にぃside］
相変わらず和は
先生、看護師、カウンセラーを
全力で拒んで泣き叫ぶ。
何度も行われる診察の度に、大暴れして
採血となると過呼吸…
酷い時には意識をとばしてしまう。
恐くて恐くて仕方ないのだろう…
いっぱい、頑張ってるんだもん…
そう思うと、ついつい甘やかしてしまって。
そのせいで、和はセーブが
上手くできなくなり始めていた。
食べたくないものは放り投げるし、
気に入らないことがあると物を投げることも
増えた。
最近は俺らを脅すかの様に、点滴を引っ張って
抜こうとして、自分の主張を
通そうとすることもある。
これでは駄目だと分かっていても
上手く和に伝えることができなくて…
和の行動はエスカレートしていくばかり。
俺は正直「仕方ないか」って諦めかけてた。
家に戻れれば、また元に戻るだろうって
自分に言い聞かせてた。
でも、翔にぃは違った。
「和の入院は
この先も何度もある。その度に
やりたいようにやらせていたら
セーブが効かない子になっちゃう」って。
「病気でも、病気でなくても
やって良い事と、いけない事に
違いは何もない」って。
真っ直ぐに和に向き合って、
きちんと厳しく言い聞かせた。
翔「食べないなら、食べないでいいよ。
ごちそう様って言うんでしょ？」
和「いらない！おいしくない！」
翔「こら！投げたら駄目って何度言ったら
分かんの？次やったら、手叩くからね」
和「あっちいけ！おいしくないのが
いけないんだもん！」
翔「こら！」
和「や、いたい…」
手をパチンと叩かれた和は、途端に目に涙を
いっぱい溜める…
翔「ごめんなさいは？」
和「…いじわる」
翔「ご飯を投げるのは、やってもいいこと？」
和「…」
翔「かず？」
和「…けないこと。ごめん、なさい…」
ポロポロ泣いて翔にぃに手を伸ばす和。
翔にぃはすぐにギュッと抱きしめて
落ち着かせてくれる。
こうやって素直に謝る時もあれば、
ヘソを曲げてしまって
なかなか謝れない時もある。
だけど翔にぃは折れずに言い聞かせる。
病気になる前から教育は翔にぃ担当…みたいな
感じだったから、叱るのは上手だ。
本気で怒ったら智にぃも怖いけどね…
和は叱られても、にぃ達の愛をしっかり
感じているし、信頼しているから
助けを求める時にも、俺らに縋ってくれる。
和「こわいー、にぃがここにいてー」
今日も採血から逃げ回って
俺らを求めて泣いている…
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作者名：空
| 作成日時：2013年4月5日 8時
