5人で生きてゆく…【幼き記憶】 (ページ12)

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12.【一時退院】ページ12

［雅にぃside］

潤と和が会えなくなって
3週間が経とうとしていた…

潤「やっぱり、入り口まで行こう？」

テンションの上がった潤に
ぐいぐい引っ張られて病院の入り口まできた。

もうすぐここから和が出てくるんだ。

新しい病院が決まったから、転院するまでの間
和は一時退院が許された。

病気は今すぐに、どうこう出来るものでは
ないからっていうのも理由の一つだ。

それに家には翔にぃがいるからね。

医院長先生に話をしたら、しばらくは
自宅での看病の為に協力できることは
してくれるって言ってくれたみたい。

潤「あ！かーずー」

和「…！じゅん！！」

あ、笑った…

あの検査以来、和は笑うことを
忘れてしまった様に、口角を上げるという
行為をしなくなっていた。

俺らがいくら笑いかけても表情を
変えようとしなかったのに…

和「…外、気持ち良い…」

和は潤に抱き付いたまま
外の空気を沢山吸い込んだ。

潤「久しぶりだね、和。
もう痛くないの？」

和「ん。もう大丈夫だよ。」

後部座席で楽しそうに話してる2人は
学校のことや友達のこと…

話は家に着いても尽きることがなかった。

みんなで楽しく昼食を食べて、和は薬の時間。

和「それは、嫌。飲み込めないもん」

錠剤が上手く飲み込めない和は
渡された薬を押し返してぷぃっと顔を背ける。

病院では潰して飲まされていたみたいだけど、
それはそれで苦くなるから嫌いみたい。

翔「また溶かしてやろうか？」

和「んーん。飲みたくない…」

ずっと病院で頑張っていたから
そろそろ限界なんだろう…

駄々をこねたくなる気持ちは、すごくよく
分かるけど、今の和にとって
薬はすごく大事なものなんだ。

俺らも薬に縋ってる部分があるから
飲ませなきゃって責任を感じていて…

翔「和？薬は飲まなくて良いものじゃ
ないでしょ？」

逃げ出そうとした和の腕を掴んで、
翔にぃは言い聞かせる。

和「だって…飲み込めないもん…」

翔「じゃあ、潰して溶かしてやるから」

和「んーん…そしたら、苦いもん…」

翔「だーめ。どっちかだよ？」

和「んーん…」

翔「かず？それは我儘でしょ。」

和「んー、…めない。や…やだ…」

翔にぃの手を離させようと
バシバシ叩きながら泣き出した和。

智「おいで、和。飲ませてあげる。」

和「…まない。のめないもん…
やなの、はなして…やだ…」

和はフローリングの上にひっくり返って
泣きながら抵抗している…