無口少女と精神科医【米森サトル】

記憶、蘇生 ページ18

サ「記憶が、戻った...？」


サトル先生は信じられないとでも言っているかのような目で私を見てきた。


サ「...君は、何処まで思い出したんだい...？」

『...全部。私のことも、何で私が先生の所で治療をしていたのかも、
...私の弟が何をしたのかも、全て...。』


何故、今になって思い出せたのか。
そこまではわからないけれど...。


サ「...そうか。」

サトル先生はそう言うと、私の頭を撫でた。
ゴム手袋をつけているから冷たいはずなのだが、
少し温もりを感じて、心地よかった。


サ「...本当に、記憶は戻ってるんだよね？」

『はい？そうですけど...。』

サ「...だよね。記憶が無かった時と比べて、よく喋るように感じたから...。」


自分は気にしてはいなかったが、
サトル先生は私が流暢に喋る事に違和感を感じていたらしい。
少し困惑の表情を浮かべている。



「...あ...。」
「Aちゃん...起きたんやな...。」


入口の方から、そう声が聞こえた。
声の主はユキナリ君とミサキさんのようだ。
二人は私達が座っているベッドの近くにやってきた。


『あ、ユキナリ君にミサキさん。他の部屋は調べてきたんですか？』


そう問いかけると二人とも驚いたような顔をした。
私は頭に？を浮かべていると、サトル先生が答える。


サ「えっと、どうもAちゃん、記憶が戻ったみたいなんだ...。」


それを聞いた二人は更に驚いた顔をした。

ユ「えっ！そうなんですか！？」
ミサ「というか、まず記憶喪失だったん！？」

サ「あっそうか。僕は精神障害のことは言ったけど、
記憶喪失の事は言ってなかったか...。」


サトル先生がそう言って苦笑いをする。
私は少し困惑しつつも、話し始めた。


『あの、他の部屋で何か見つけたものとかありましたか？』

そう問いかけるとミサキさんは１つ咳ばらいをした。

ミサ「えっとね、隣に大部屋があったんやけど、
そこには私達の荷物しか置かれてなかったわ...。」


『...そうなんだ。じゃあここの探索を始めよっか...。』

そう言って私はベッドから立ち上がる。するとサトル先生が心配そうな顔をした。


サ「...大丈夫かい？Aちゃん。もうちょっと休んだ方がいいんじゃ...？」


『...大丈夫です。それに、私はさっきまで寝てましたから。』


そう返して私は部屋を見回す。
目に入ったのは積み上げられた紙の束。
私は何かと思いそれに近づき、一番上にある紙を一枚手に取った。

『！これって...！』

(字数より次Ｐ)

真っ白の紙に書かれたもの→←薄い唇から発せられた音は

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