無口少女と精神科医【米森サトル】

痛み ページ16

『.....ん.....んう....？？？』


深い海底から水面へ。まるで水に濡れてしまったかのように重たくなった瞼を私は開いた。
だけどおかしい。瞼を開けたはずなのに、目の前が真っ白だ。
何故？そう思って目をパチクリとさせる。



「....？？...Aちゃん、もう起きたのかい...？」




...？この声は...？？
そう思っていたら、真っ白だった視界がなくなった。
今私の目の前には、白衣を纏い、眼鏡を掛けた男の人がいるのがわかる。



(...さっきの....もしかして、白衣...だったのかな...。)



私がそう考えこんでいると目の前にいる男の人はまた喋り始める。



「...？Aちゃん...？？
...あぁそうか、もしかして、僕のこと、覚えていないのかな？」




私はぼんやりとその人を見つめる。
ブラックジャックのような髪型。少し白みがかった青の瞳に金縁眼鏡。
黒のハイネックの上から白衣を着ていて、緑のゴム手袋をつけている。




『えっと....。』




見覚えはあるはずなのだが思い出せない。なぜなのだろうか。




「...多分混乱してて記憶が曖昧なんだね。...この薬を飲んで、多分思い出せるから。」




そう言って彼は私に薬を差し出す。私はそれを飲んだ後、彼に問いかけた。


『貴方は...誰...？...私は...？』



サ「...僕は米森サトル、君は有馬Aで、僕は君の担当の医者だよ。」


そう、言い聞かせるように彼は答えた。



(私は....有馬A....？？？)




何故か引っ掛かる。なんで？




(そういえば、何で私は寝ていたの...？？)




頑張って思い出そうとする。だが何故か記憶がぼんやりとしていて、思い出せない。




『私は....有馬.....A.....？？？』


そう言った直後、



ズキッ！！！！！！


『...ッ！？』




私は頭に鋭い痛みが走るのを感じた。



(痛い....何で....？？？？)



頭で考えれば考えるほど、痛みはどんどん増していく。
ショックで倒れてしまうのではないかと思えるくらいに。



『....だ....れか...たすけ....。』



そう呟いた直後、どこからか、声が聞こえてきた。








「姉さん...。」




さっきの先生とは違う、誰かの声。
優しくて、暖かくて、でもとても哀しげな声だ。
....何処か....、....何処かで、聞いたことがあるような気がする...。







「ごめんね...、姉さん。....僕がこんなだから。姉さんにも迷惑かけて。」





...誰？....貴方は誰なの...？？？







「....僕？....僕の名前は...。」

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