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ガリガリに痩せ細っていた山本が入ったあとの風呂水には少し埃が浮いていた。風呂にも入っていなかったのだろうか。
「…お前、三日間誰にも連絡を寄越さず何をしていたの?」
片手間にメンバーへの簡潔な連絡を済ませ、毛布にくるまりこちらに身を寄せている山本に聞く。
三日間しか会っていないのにも関わらず、彼から醸し出す雰囲気はまるで別人のものだった。
「僕は……生きる、準備をしていました」
「生きる、準備?」
「『クイズノックの山本祥彰』として、生きる準備です。……これで伝わりませんか」
「なんだ、それ…」
ちら、と一瞬こちらを見た山本の目は廃れている。
「やり直したかった。…つらかったんです。なんのために仕事をしているのか、自分は自分にとってなんなのか、もう全部、わかんないから」
毛布から覗く指の先はひどく荒れている。
「…誰にも相談しなかったのかよ」
「…たった一瞬の窮愁、って言ったでしょう?そう考えた時から、準備は既にできていたんですよ」
「それを実行に移したのが、失踪した三日間だったってことか」
「まあ、そうですね」
ぼんやりと言葉を紡ぐその唇は、ボロボロになっている。
「それで、最終的にお前は自分から戻ってきた、と」
「戻ってくるために失踪したっていうのが正しいです、けど、…何も残さなかったのは、そういうことです」

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作者名:達者 | 作成日時:2020年11月13日 20時

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