１２【降谷side】 ページ13
.
組織に潜入する俺への疑惑があることは、薄々感じていた。
そして、それが仕方がないことも承知していた。
敵を騙すにはまず味方から。
そういうように、きっと味方が疑惑を持つ分だけ、俺は組織の信頼を勝ち取ることができる。
本当に、それでよかったのに。
.
たとえ悪人だろうと本来なら守るべき人間だった。
それを、組織の命令で殺した。
でも、これが国のためになるのなら手を汚すことなんて構わなかった。
ただ、その行為すらも、疑惑を深めていくのだろうと、自嘲気味に笑っていた。
そんなとき、彼女の凜とした声が鼓膜を震わせた。
『先輩が本気で人を殺したくて殺してると思ってるんですか。
あの人は、ここで何もできない私たちに代わって手を汚してくれているのに。
進歩しない現状をあの人のせいにするのは最低なことだ』
彼女は、俺が手を汚したことを容赦なく指摘した。
でも、それは俺だけの責任ではないのだと言って。
『笑いたくないのなら、笑わないでください』
嬉しかった。
日々、重くのしかかる疑惑の目。
信頼する部下でさえも疑ってしまいそうだったあの頃。
すれ違いざまのあの言葉が。
どこか悲しさを含んだ柔らかな声が。
あの一言が、俺を救ってくれた。
【汚れた自分ごと、認めてくれた】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 467人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ホノ☆(プロフ) - ぱすた茶さん» ありがとうございます！！そう言っていただけるとすごく嬉しいです！！私の安室さんへの愛（笑）が詰まった作品なので本当にありがとうございます！！ (2017年7月29日 19時) (
レス) id: b619beff59 (このIDを非表示/違反報告)
ぱすた茶(プロフ) - こちらの作品を読ませていただくのは二回目で、もう結末を知ってると一話目からボロ泣きでした…本当に面白いし泣けるしもう最高です！言葉のチョイスがとても好きで、もう更にボロ泣き｡:ﾟ(｡ﾉω＼｡)ﾟ･｡作者様、最高の作品ありがとうございました！！！ (2017年7月29日 18時) (レス) id: f73f9c86b3 (このIDを非表示/違反報告)
ホノ☆(プロフ) - 霧さん» そう言っていただけてすごく嬉しいです！！本当にありがとうございます！！ (2017年5月29日 23時) (レス) id: b619beff59 (このIDを非表示/違反報告)
霧 - これ、読むたびに泣いてます…！すっごい切なくて、最後くっつくの知ってるのに泣いちゃうんですよね…。面白かったです！ (2017年5月29日 22時) (レス) id: 1e43368747 (このIDを非表示/違反報告)
ホノ☆(プロフ) - リラリアさん» いえいえ！そう言っていただけてすごく嬉しいです！！本当にありがとうございます！！ (2017年5月28日 20時) (レス) id: b619beff59 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
