【wlrlwlrld/!!】×腐⇒Vol.5

▽ ページ7

言葉が途切れる。するりと襟の間から外されたネクタイが、俺の項を通って首に絡み付く。絞められるんじゃないかなんて不安も束の間、至近距離に迫った彼の舌が先程の噛み跡を焦れったく舐めた。

ぞわりとした違和感にも似た感覚が伝い、雷を前にした時のような本能的恐怖で先輩を睨み付けた。強がりでしか生きられない、猫とはそういう生き物である。


「ネクタイを恋人に贈る意味知ってて贈ったやろ、バレてんねんで」
「は？」
「え？」
「ん？」
「え？」
「いやそんな裏設定知らないんすけど」
「えっネクタイ贈る意味知らんの？」
「すいません真面目に分かんないっす」


俺がそう言うとコネシマさんは最初こそあたふたとしていたものの、直ぐに意地の悪そうな笑顔を浮かべた。ソファの上で俺の腕を引き、その勢いであっという間に形勢逆転。衝撃ビフォーアフター。


「まぁええわ、今日はショッピ君にいーっぱい教えたい事あったから全部纏めて教えたるわ」
「は？何言って」


先輩は童謡を元気よく歌う子供のように笑いながら、俺の顔に左手を添わせた。



「まずこのネクタイの意味やろ？」


指折り一本。


「そんで噛んだ意味やろ？」


指折り二本。


「何で今押し倒したかもそうやな」


指折り三本。


「後輩は疲れた先輩にどういう対応せなあかんかも」


指折り四本。




「他の先輩の言うことはよく聞く良い子なんやもんな？ショッピ君は」



弾丸のような彼の言葉。無理やり雲の上にひょいと乗せられるような代物。

ただ俺は、首に絡み付くような形のネクタイを贈ることで遠回しにぼかした独占欲を満たそうとしただけであって。
そこに決して、悪気など無かった訳で。
只々貴方に惚れ込んでいただけであって。

「ショッピ君が誰のもんか、よーく此処に教えたるわ」


まだ引き摺ってんねん。



かちり、と何か音がした。
ぞわりと背中に這う焦れた気配。
ぎこちなく微笑んで、諦めるしか選択肢は残されていなかった。





─────もうこの際貴方だけで良い。
お願いだから俺を巣食って下さい、等と。









【今夜は貴方に全てを捧げます】。

ピース・オブ・ケーキ。─────rd×syp.→←▽

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す