検索窓
今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:42,116 hit

11.梵天 ページ12

.




…あれから何年が経っただろう。

俺は梵天という犯罪組織の一員になっていた。

明らかに堅気とは程遠い世界だ。


蘭「…あ?三途、髪切るんじゃなかったのかよ。」

竜胆「俺とお揃いじゃねーか。キモ」


アイツに会う為に伸ばしていたこの髪は、あれからずっと切ってないまま。

本来ならば、アイツとの再会を果たした後に切ってやろうとずっと思っていたのだが


”髪、すごく綺麗だよ。だから胸張って生きて”


アイツにその言葉を貰い、俺は親ではなくアイツの為にこの髪を伸ばそうと決めたのだ。

けれど…


鏡を見て、この長い髪を見るたびに思い出す。

もう二度と会えないのは分かりきっている。だからこそ思い出の中から何度もアイツを頭の中に引っ張り出す。

そんなことを繰り返してる自分が段々と情けなくなったのだ。まるで縋っているようだ。


きっと今頃アイツは一人で強く生きているだろう。いいや、隣には堅気の男が居るかもしれない。

そう思うと、途端に独りぼっちにされたようなさみしさに襲われる。

クスリを飲んでも人を殺してもその虚しさは消えない。

ならばこの髪も切ってしまえ。そう思い美容院に赴いたのだが…


「……ちょっと待て。」


切り落とされていく髪を見ながら、俺はストップをかけた。

…できない。

結局俺は、未だ思い出に縋っているんだ。


蘭「おい三途ぅ、聞いてんのかよ。」

「…黙れカス」


灰谷の言うことを聞きながし、ドカッと無遠慮にソファへ寝転ぶと顔の上に書類が降って来た。


「チッ!なんだよさっきからうっせぇなぁ!?」

蘭「次のスクラップ候補だ。俺等の周りをウロついてる女がいる。」

「そーかよ!んじゃ適当に連れて来いよ処理すっから」

蘭「いや見てみ、結構可愛いんだぜこの子。えーっと名前は…藤島Aちゃん。」

「しつけぇ!!」


俺の目の前でひらひらさせている紙と写真数枚を乱暴に奪い、手の中で丸めるとゴミ箱へ投げ捨てた。


竜胆「でも、なんでこんな女の子が梵天なんか調べてんだろうな」

蘭「は?警察関係者とかじゃねぇの?」

竜胆「いいや。それが普通の会社員なんだよ。」

蘭「なんだそれ。いみふめ〜」

「チッ、うるっせぇな。寝れねぇだろーが!」

竜胆「ちなみにその女、三途の名前を出してたらしいぞ。」

蘭「三途の?おい三途、聞いたか?」



意識が薄れ、二人の声が遠のいていく中

あまざらしの記憶の中でアイツが俺の名前を呼んでいるような気がした。

.

12.望んだ再開→←10.三途春千夜



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (240 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
251人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

りお - とっても刺さる素敵な作品でした(;o;)春千夜にも夢主にもガンダーラで幸せになってもらいたいと思いましたT^T (2021年10月31日 1時) (レス) @page17 id: fffe7db0be (このIDを非表示/違反報告)
れいん(プロフ) - 寝る前に読んでみたら 一つ一つの言葉が凄く刺さって 涙出ました (2021年10月31日 0時) (レス) @page16 id: 817f921072 (このIDを非表示/違反報告)
Ibibubu(プロフ) - 本当に作者様の書いた作品が凄く好きで、素敵な作品をありがとうございます (2021年10月29日 23時) (レス) @page18 id: 9aefec9a34 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ - すごいな、これ… (2021年10月29日 1時) (レス) @page18 id: 0e789b8f74 (このIDを非表示/違反報告)
不夜城・レイス(プロフ) - 一行一行が凄い感動しました(泣) これからも応援してます! (2021年10月28日 19時) (レス) @page12 id: 23f9dcf647 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2021年10月24日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。