10.三途春千夜 ページ11
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今は、あの頃とは何もかも違う。
「大きくなったな。」
俺も、お前も。
もうお前は、俺が居なくても生きていけるのか。
『お兄ちゃんも、大きくなったね。』
お互い会わない間に知らない場所で成長したんだ。
『ねぇ、お兄ちゃんの名前…知りたいな。』
「………」
後ろで微かに椅子の動く音が聞こえた。
俺の名前を教えるのも、相手の名前を聞くのも禁止されている。
『お兄ちゃん？』
初めて会った雪の降るあの日、傷だらけの体でベランダに座り込んでいた
今にも消えそうだった少女が
いま俺の目の前で生きている。
よかった。
会いに来てよかった。
何も言葉を発さない俺を見て、ソイツは言葉を続けた。
『……ねぇお兄ちゃん。お兄ちゃんのその髪、すごく綺麗だよ。だから…」
”胸張って生きてね”
俺は今日、本当は「俺のことは忘れろ」と伝えるつもりだった。
嫌な過去なんて忘れて、前だけを見て生きろ。と
けれど、出来なかった。
コイツが俺を覚えていてくれたことに安心した。
一生忘れずに心の片隅で覚えていてくれと願ってしまった。
俺の肩に、後ろから手を置かれた感触がした。
…時間が来た。
コイツもそれを察したのか、握っていた手をお互い強く握った。
あの日と同じように。
「最後だ。いいか、よく聞け。俺の名前は――…」
言いかけたところで、警察に強く腕を引かれた。
『っお兄ちゃん！』
繋いでいた手が引き離される。
フラッシュバックするのはあの日の光景。
「三途春千夜!!この名前覚えとけ！」
警察に乱暴に引きずられながらも、必死に叫んだ。
もう二度と会えないのはわかっていた。
口を塞がれても尚、それを振りほどき叫んだ。
「忘れんな!!俺は三途春千夜だ!!」
俺という存在を、強くアイツに刻み付ける。
もしまた会えるのならば、そのときは今度こそ二人で行こう。
あの日二人が目指した場所へ
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りお - とっても刺さる素敵な作品でした(;o;)春千夜にも夢主にもガンダーラで幸せになってもらいたいと思いましたT^T (2021年10月31日 1時) (
レス) @page17 id: fffe7db0be (このIDを非表示/違反報告)
れいん(プロフ) - 寝る前に読んでみたら 一つ一つの言葉が凄く刺さって 涙出ました (2021年10月31日 0時) (レス) @page16 id: 817f921072 (このIDを非表示/違反報告)
Ibibubu(プロフ) - 本当に作者様の書いた作品が凄く好きで、素敵な作品をありがとうございます (2021年10月29日 23時) (レス) @page18 id: 9aefec9a34 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ - すごいな、これ… (2021年10月29日 1時) (レス) @page18 id: 0e789b8f74 (このIDを非表示/違反報告)
不夜城・レイス(プロフ) - 一行一行が凄い感動しました(泣) これからも応援してます！ (2021年10月28日 19時) (レス) @page12 id: 23f9dcf647 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：平
| 作成日時：2021年10月24日 21時
